オムニバス映画『LABYRINTHIA/ラビリンシア』テアトル新宿・公開初日舞台挨拶の公式リポート

『LABYRINTHIA/ラビリンシア』(短編三作)を手掛けたのは新鋭監督、中西舞。彼女は企画コンペ等で認められ、本作の第一話『SWALLOW』、第二話『HANA』を新人監督ながらも『哭声/コクソン』のサウンドテザインを手掛けるMonofoley Sound Worksや『哭悲/THE SADNESS』の特殊メイクチームなど、アジア各国の実力派スタッフを率いて撮影している、まさに驚きの存在だ。米、バラエティ誌では注目の日本人新鋭監督10人にも選ばれている。この秀でた才能と行動力は、本作三話目の『告解』でも発揮され、主演:和田光沙、撮影監督:芦澤明子など、日本での監督デビューとは思えぬ陣容を整えての撮影となっている。『SWALLOW』はCINEMAZ International Film Festival 最優秀監督賞他、『HANA』はPortland Horror Film Festival最優秀作品賞他、世界中で受賞を果たし、『告解』もコンペ等に選ばれ注目を集めている。監督の最大の特徴はジャンル映画を志している点、女性監督としては、非常に珍しく貴重な存在で、短編オムニバス『LABYRINTHIA/ラビリンシア』は本年度、最注目の作品である。
《第一話『SWALLOW』あらすじ》

永遠の若さ、その代償は——。
女優として成功する事に全てを注ぐ雪蘭(シュラン)。ある日彼女は女優仲間の咪咪(ミミ)から招待制の晩餐会に誘われる。10年前から変わらない咪咪の若さと美貌の秘密は、晩餐会で出される料理に隠されていると期待を膨らませる雪蘭だったが、そこで待ち受ける狂気の渦に彼女は呑み込まれて行くー。
《第二話『HANA』あらすじ》

あるベビーシッターの恐怖の体験・・・
ベビーシッターの面接を受けにある高級マンションを訪れた大学生のスジン。彼女を待っていたのは4歳になる娘ハナの母親だった。威圧的な態度で面接を進める母親に圧倒されるスジンだったが即採用となり、その日からベビーシッターをする事に。母親が外出し、スジンはハナが昼寝から目覚めるのを待つが、彼女の周りで次々と不思議な現象が起こり始める。
《第三話『告解』あらすじ》

その懺悔は、聞いてはいけないものだった——。
教会で静かに祈りを捧げる神父の元に訪れる一人の若い女性。自身の犯した罪を告白したいと言う女性の願いを聞き入れる神父だったが、穏やかな世界を根底から揺るがす不穏な真実が神父を待ち受けていた。
《テアトル新宿・公開初日舞台挨拶公式リポート》



2025年8月15日(金)より、テアトル新宿、テアトル梅田、アップリンク京都、ほか全国順次公開を迎えた映画『LABYRINTHIA/ラビリンシア』。8月15日にはテアトル新宿にて公開初日を記念する舞台挨拶が行われ、映画ソムリエ・東紗友美の司会進行のもと、第三話『告解』で主演を務めた俳優の和田光沙、そして本作を手がけた中西舞監督が登壇した。
韓国・釜山国際映画祭が主催するワークショップへの参加し、現地のフィルムメーカーたちに「釜山で映画を制作する機会があれば、ぜひ手伝う」と言われたのをきっかけに、韓国にて初監督作である第二話『HANA』を制作して以来、監督として映画制作活動を続けている中西監督。
「自分にはホラー映画のDNAが刻まれている」と語る中西監督は、幼い頃にヒッチコックの名作『サイコ』(1960)を観た際に初めて「人間のダークサイド」に触れて衝撃を受けたこと、自身の感動を共有したくて「アイスクリームが家にあるから」と小学校のクラスメイトたちを誘い『サイコ』の自宅上映会を行ったことを告白。そして、上映会中のクラスメイトたちの姿から「他者が映画を観て怖がってくれることへの快感」にも芽生えたことで、現在までホラー映画・スリラー映画というジャンルに魅了され続けていると明かした。
また和田が主演を務め、中西監督にとって初の日本制作作品となった第三話『告解』について、和田は監督との顔合わせ時に「虫などの自分よりも弱い生き物を、何気なく殺めてしまう」という《衝動》に正直であるがゆえの子どもの残酷さに関して話したと言及。中西監督も、そうした幼少期の記憶と共に一生涯残り続ける罪悪感を題材に、ある一人の女性の罪の懺悔という『告解』の物語を形作っていったと本作の着想の経緯を語った。
話題は『告解』の撮影ロケ地の一つ・豊島カトリック教会へと移り、神父役を務めた水澤紳吾と和田は、それぞれが池袋にある同教会へ撮影前に訪問していたとのこと。また映画作中における女性の神父の呼び方(「神父さん」と「神父様」の違い)など、自身もプロテスタント宗派の信徒である和田はクリスチャンの視点としても中西監督にアドバイスをしたほか、2022年に出産を経験した自身の「子を産み、育てる母」としての視点からも、中西監督と自身の演じた女性の人物造形を相談していったと役作りについて明かした。
イベントの最後、劇場に訪れた観客へのメッセージを求められた二人。和田は、誰しもが「自分の見たくない部分」「自分の愛せない部分」を持っていると触れた上で、本作を通じてそれらを愛せるようになってくれると嬉しいと言及。また中西監督は、映画祭での上映や特別上映を除くと『LABYRINTHIA/ラビリンシア』が自身にとって初の劇場公開作品となったことへの喜びと感謝を改めて語った上で、少しでも多くの方に映画をご覧いただきたいと本作への想いを言葉にし、イベントは幕を閉じた。
『LABYRINTHIA/ラビリンシア』作品クレジット
第一話『SWALLOW』
出演:韓寧、劉黛瑩、陳雪甄/監督・脚本・編集:中西舞/プロデューサー:郭柏村、沈樺、中西舞/撮影監督:衛子揚/サウンドデザイン:Monofoley Sound Works/特殊メイク:IF SFX Art Maker
原題:喰之女/2021年制作/22分/中国語/ステレオ/台湾 ・日本/©SWALLOW FILM PARTNERS.
第二話『HANA』
出演:イ・チョンビ、チョン・ヒジン、キム・ドウン/監督・脚本・編集・美術:中西舞/プロデューサー:イ・ジュンサン、中西舞/撮影監督:イ・ジュンサン/音楽:ユン・チェヨン
原題:하나/2018年制作/13分/韓国語/ステレオ/韓国・日本/©2018 HANA
第三話『告解』
出演:和田光沙、水澤紳吾/監督・脚本・編集・美術:中西舞/プロデューサー:森田一人、中西舞/撮影監督:芦澤明子/音響:弥栄裕樹
2025年制作/15分/日本語/5.1ch/日本/©CONFESSION Film Partner.
全3話/総尺:約50分/カラー/配給:インターフィルム/G
公式サイト:labyrinthia.jp
公式X(旧Twitter):@labyrinthiaeiga 映画ハッシュタグ:#ラビリンシア
8月15日(金)より
テアトル新宿、テアトル梅田、アップリンク京都、ほか全国順次公開