ピーター・バラカンさん、ポーランド映画とその音楽の魅力を語る!
パヴェウ・パヴリコフスキ監督最新作『COLD WAR あの歌、2つの心』が6月28日に公開初日を迎え、父親がポーランド人で音楽に造詣が深いピーター・バラカンさんをゲストに招いたトークイベントが開催されました。当日のイベントレポートをお届けします。
本作をすでに3回も鑑賞したピーターさん。「回を重ねるごとにこれまで気づかなかった事に気づけた」と、余計な説明は一切排除、余白を通して自分なりの想像や解釈も楽しめる本作の魅力を彼なりに堪能しているとその魅力を満席の会場に伝えました。
その後、自身の父親はポーランド人だが、これまでポーランドに行く機会もなく、それほどポーランドに関心を持たないまま大人になってしまった」と述べ、しかし、偶然今年の4月、音楽フェスの取材のためにポーランドに行く機会があったことを告白。
その場所で偶然本作の冒頭にも登場、劇中に出てくる民族合唱舞踏団“マゾフシェ”の原型でもある素朴な民族音楽“農村マズルカ”と出会ったと明かし、ショパンも愛したと言われるこの民族音楽について「社会主義の時代になると、田舎の農村の音楽はダサいと言われるが、洗練された形にすると初めてみんなが評価する」「政治でこんなにも音楽の形が変わって行くのか」と、いつの時代も社会の波に翻弄されてしまう文化の現実を語りました。
実は現在ワルシャワを中心に空前の盛り上がりをみせる農村マズルカ。そのリバイバルの立役者でもあるヤヌシュ・プルシノフスキにつては「彼らは民族音楽を収集してアレンジ、歌い演奏し続けている。アレンジしているため“純粋な伝統音楽”ではないかもしれないが、形は変わっても残り続けて行くには重要なこと」と称賛した他、「3拍子ではあるのだけど、アクセントのつけ方などが独特で一言で表現しきれない」と農村マズルカの不思議な魅力について語りました。
ほか、劇中、主人公ズーラがジャズクラブで世界中で大ヒットしたロックナンバー『ロック・アラウンド・ザ・ロック』を背景に踊り出すシーンについては「彼女のパリでの生きずらさを表現しているはず」など、本作の第3の主人公とも言える音楽を中心とした鑑賞の仕方についても彼なりの解釈を伝えるなど、音楽に造詣の深いピーターさんならではの視点で本作を語りました。
『COLD WAR あの歌、2つの心』
『イーダ』で第87回アカデミー賞・外国語映画賞を受賞、世界的な評価を受けるポーランドのパヴリコフスキ監督最新作。第91回アカデミー賞では監督賞、撮影賞、外国語映画賞の3部門にノミネートされた。冷戦に揺れるポーランド・ベルリン・ユーゴスラビア・そしてパリを舞台に美しいモノクロ映像と音楽で描き出したラブストーリー。民族音楽、民族ダンス、さらにジャズにのせて心と五感を刺激する音楽と映像美でつづった話題作。
【STORY】
ピアニストのヴィクトルと歌手志望のズーラはポーランドの音楽舞踏学校で出会い、愛し合うようになる。冷戦中、ヴィクトルは政府に監視されるようになり、ベルリンでの公演時、パリに亡命する。
歌手になったズーラは公演活動で訪れたパリやユーゴスラビアでヴィクトルと再会する。ズーラは彼とパリに住み始めるが、やがてポーランドに戻ってしまい、ヴィクトルも後を追う。二人の愛は結ばれるのだろうか…
監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
脚本:パヴェウ・パヴリコフスキ、ヤヌシュ・クウォヴァツキ、
脚本協力:ピヨトル・ボルコフスキ
撮影:ウカシュ・ジャル
出演:ヨアンナ・クーリク、トマシュ・コット、アガタ・クレシャ、ボリス・シィツ、ジャンヌ・バリバール、セドリック・カーン 他
配給:キノフィルムズ/木下グループ 後援:ポーランド広報文化センター