YABOサタデー映画館―2017.12.16
『YABO』の由来は野望。
野望という強い意志を持って前向きに生きる人を取材し、その人の魅力や情報を発信するフリーペーパーです。
WEB版では毎週土曜日に「YABOサタデー映画館」を掲載。
作品をあらすじとともに野望や希望、理想にあふれる人物をYABO人としてピックアップします。
今週は下記の4作品をご紹介します。
『彼女が目覚めるその日まで』
『8年越しの花嫁 奇跡の実話』
『はじまりの*ボーイミーツガール』
『ヒトラーに屈しなかった国王』
『彼女が目覚めるその日まで』
YABO人: 21歳のスザンナ・キャハラン(クロエ・グレース・モレッツ)
憧れのニューヨーク・ポスト紙で働き、1面を飾る記者になる夢へと突き進んでいた。付き合い始めたばかりのミュージシャンの恋人スティーヴン(トーマス・マン)を両親に紹介し、仕事も恋も順調だった。ところが、突然、物忘れがひどくなり、トップ記事になるはずの大切な取材で、大失態を犯してしまう。幻覚や幻聴に悩まされて眠れず、遂には全身が痙攣する激しい発作を起こして入院するが、検査結果は「異状なし」。日に日に混乱し、会話も出来なくなっていき、医師たちから精神科への転院を勧められる。しかし、スティーヴンの何気ないひとことから、「抗NMDA受容体脳炎」という珍しい病気だと判明する。
憧れの新聞社で仕事をし、キャリアアップの可能性をつかんだ矢先に見舞われた体の不調。原因が分からず、精神病を疑われた。主人公のショックはいかばかりだろう。また、支える恋人や家族の心労も計り知れない。
原作は、世界で217人目の患者となったスザンナ・キャハラン本人がジャーナリストの手腕で発病から回復までの壮絶な闘病の日々を綴った『脳に棲む魔物』(KADOKAWA刊)。映画化にあたり、スザンナは共同プロデューサーとして全面協力した。そして、本作が「『抗NMDA受容体脳炎』という病気に対する意識を喚起するものになるので、多くの人を助ける映画になることを確信している」と語る。
『彼女が目覚めるその日まで』
2017年12月16日(土)より角川シネマ有楽町他全国ロードショー
監督・脚本:ジェラルド・バレット
出演:クロエ・グレース・モレッツ、トーマス・マン、キャリー=アン・モス、リチャード・アーミティッジ、タイラー・ペリー、ジェニー・スレイト
配給:KADOKAWA
©2016 On Fire Productions Inc.
公式サイト: http://kanojo-mezame.jp/
『8年越しの花嫁 奇跡の実話』
YABO人:尚志(佐藤健)
会社の先輩に連れられて行った合コンで麻衣(土屋太鳳)と知り合う。寡黙な自分とは対照的に、麻衣は思ったことをはっきりと口にするタイプ。いつの間にか付き合うようになっていた。
それから1年が経った頃、思い切って麻衣にプロポーズ。勢いのまま、麻衣が気になっていた結婚式場を予約し、2人は幸せの絶頂にいた。ところが、突然、麻衣が原因不明の病気になり、意識不明となる。いつ目が覚めるかわからない状態で、麻衣の両親(薬師丸ひろ子、杉本哲太)から「もう麻衣のことは忘れてほしい」と言われてしまうが、それでも諦めずに麻衣の側で回復を祈り続けた。昏睡状態になってから1年半、ようやく麻衣は目を覚ます。しかし、さらなる試練が二人を待ち受けていた。
『彼女が目覚めるその日まで』と同じ病気にかかった日本人女性の実話を元にしている。あちらが病名の判明までを克明に描いたのに対し、こちらは病名がわかってからの試練を中心に描く。
意識不明の状態が長く続き、やっと意識が戻ってハッピーエンドかと思えば、2人にとって、実はそこからが本当の試練。体だけではなく、心の機能回復が必要だったのだ。お互いを思うがゆえに生じる悲しみや葛藤。それらを乗り越えたうえで迎えた結婚式の喜び。佐藤健と土屋太鳳が細やかな演技で魅せてくれた。
『8年越しの花嫁 奇跡の実話』
2017年12月16日全国ロードショー
監督:瀬々敬久
出演:佐藤健、土屋太鳳、薬師丸ひろ子、杉本哲太、北村一輝、浜野謙太、中村ゆり、堀部圭亮、古舘寛治
配給: 松竹
©2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会
公式サイト: http://8nengoshi.jp/#/boards/8nengoshi
『はじまりの*ボーイミーツガール』
YABO人:落ちこぼれのヴィクトール(ジャン=スタン・デュ・パック)
クラスの優等生マリー(アリック ス・ヴァイヨ)に恋をしているが、秀才のロマン(マックス・ガラン=ブーレグ)からの アプローチもはねつけるマリーを遠くから見つめるだけだった。ところがある日、マリーから「勉強を手伝ってあげる」と家に招待された。親友のアイカム(アントワーヌ・コールサン)から「どん底のお前に最後のチャンスだ」と煽られ、「女は信用できない」と平静を装いつつも、ウキウキと出かけていく。マリーの指導のおかげで徐々に成績があがってきた頃、マリーからプロのチェロ奏者になる夢を打ち明けられる。そして、初めて手を繋いで下校した別れ際、マリーから頬にキスされ舞い上がる。しかし、マリーには「病気でかなり視力が落ちている」という誰も知らない秘密があり、“目”として利用されていたことに気がつく。ショックを受けるが、マリーの情熱に動かされ、彼女の夢を叶えることを決意する。
子どもではないけれど、恋愛をするには幼すぎる、思春期の入口。淡い恋心を抱くクラスのあの子の何気ないひとことや行動にドキドキし、叶わぬ想いを親友に聞いてもらう。そんなキラキラする青春のひとコマを、思い出として持っていなくても、この作品を観ていると懐かしい気持ちになってくる。また、いろいろなしがらみが増えた大人には、損得抜きで付き合うヴィクトールとアイカムの友情がうらやましいだろう。
失敗をしながらも成長していく主人公たちと同じように、彼らの親も変わっていく。妻を亡くした悲しみに囚われていたヴィクトールの父親は、息子の姿に背中を押されて一歩を踏み出す。仕事第一で自分勝手なマリーの父親は、娘の夢に対してきちんと向き合う。人はいくつになっても変われるものなのだと思えてくる。
『はじまりの*ボーイミーツガール』
12月16日(土)新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開
監督:ミシェル・ブジュナー
出演:アリック ス・ヴァイヨ、ジャン=スタン・デュ・パック、シャルル・ベルリング、パスカル・エルべ
配給:キノフィルムズ
©2016 GAUMONT-AJOZ FILMS-NEXUS FACTORY
公式サイト:http://www.hajimari-bmg.com/
『ヒトラーに屈しなかった国王』
YABO人:ノルウェー国王ホーコン7世(イェスパー・クリステンセン)
ノルウェーはナチス・ドイツ軍の侵攻を受け、ヒトラーの命を受けたドイツ公使(カール・マルコヴィクス)から無抵抗での降伏を求められる。しかし政府はこれを拒否。そのため家族を連れて、政府閣僚とともにオスロを離れた。息子のオラフ皇太子(アンドレス・バースモ・クリスティアンセン)は政府がドイツに立ち向かわないなら、国王が立ち上がるべきと主張するが、国政への介入は無用な軋轢を生むと諭す。一方、ドイツ公使は国王との直接交渉をノルウェー政府に求めてくる。政府の意向を汲んでドイツ公使と対峙し、国家としての決断を伝えた。
本作は北欧の小国ながらナチス・ドイツに最も抵抗し続けたノルウェーの国王・ホーコン7世が歴史に残る重大な決断を下した運命の3日間を描く。
ホーコン7世はノルウェー国民から民主的に選出された国王である。ノルウェーは1814年、スウェーデンから立憲君主国として独立し、最初はスウェーデン国王がノルウェー国王も兼ねていた。しかし1905年に国民投票で完全な独立を決め、デンマークのカール王子を国王ホーコン7世として迎えたのだ。その国王が逃亡先で少年兵から「すべては国王のため」と敬礼されると、「祖国のためだ」と言い聞かす。生まれ育ったわけではないノルウェーを祖国と受け止めていた。その気持ちが少年兵の心に国王への強い尊敬の念を芽生えさせる。国王は常に国民の総意を判断の規範とし、状況の悪化に総辞職を申し出た内閣には、「国民から選ばれた以上、どんな状況でも責務を果たせ」と突っぱねる。厳しい状況でも、リーダーとしてまったくぶれない。
上に立つ者が持つべき意識をこの作品から学ぶことができるといえるだろう。
『ヒトラーに屈しなかった国王』
12月16日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
監督:エリック・ポッペ
出演:イェスパー・クリステンセン、アンドレス・バースモ・クリスティアンセン、カール・マルコヴィクス
配給:アット エンタテインメント
©2016 Paradox/Nordisk Film Production/Film Väst/Zentropa Sweden/Copenhagen Film Fund/Newgrange Pictures
公式サイト:http://kings-choice-jp.com/