YABOサタデー映画館―2017.5.27
『YABO』の由来は野望。
野望という強い意志を持って前向きに生きる人を取材し、その人の魅力や情報を発信するフリーペーパーです。
WEB版では毎週土曜日に「YABOサタデー映画館」を掲載。
今週公開の作品から野望や希望、理想にあふれる登場人物をYABO人としてピックアップして、作品の紹介をしていきます。
『美しい星』
YABO人:お天気キャスター、大杉重一郎(リリー・フランキー)
「地球の温暖化は急速に進み、このままでは人類は滅亡してしまいます。地球のみなさん、今ならまだ間に合います!」
父・重一郎(リリー・フランキー)は「当たらない」とやじられてばかりのお天気キャスター。アシスタントと不倫をしてる。息子・一雄(亀梨和也)はフリーター。バイトのメッセンジャーとしてオフィス街で自転車を走らせている。女子大生の娘・暁子(橋本愛)は美人すぎて周りからから浮いていて、友だちがいない。主婦の母・伊余子(中嶋朋子)は心の空虚をもて余し、ネットワークビジネスにはまり込んでいく。
ある日突然、父は火星人、息子は水星人、娘は金星人として覚醒。父は太陽系惑星連合の使者と名乗り、急速に温暖化が進んでいることを自分がお天気キャスターを務めるコーナーで主張する。息子や娘もそれぞれの使命に燃えて活動するが、周りの理解を得られず、傷ついていく。彼らは本当に宇宙人なのだろうか。
原作は三島由紀夫が自ら愛した異色のSFロングセラー『美しい星』。大学生のときに原作を読んで以来、ずっと映画化を望んできた吉田大八監督が30年越しの悲願を叶えた。
父・重一郎は温暖化を食い止めて地球を救おうと必死だが、それを訴えた作品ではない。何かに対して必死なあまり、周りが見えなくなった人々の悲喜劇を描きつつ、ばらばらで崩壊寸前だった家族が改めて結びついていく。無責任な男に騙されて妊娠した娘に対し、父がついた嘘に男親らしい愛情を感じる。
『美しい星』
5月26日(金)、TOHOシネマズ 日本橋ほか全国ロードショー
監督:吉田大八
脚本:吉田大八 甲斐聖太郎
出演:リリー・フランキー
亀梨和也 橋本愛 中嶋朋子 / 佐々木蔵之介
羽場裕一 春田純一 / 友利恵 若葉竜也
配給:ギャガ
©2017「美しい星」製作委員会
公式サイト:http://gaga.ne.jp/hoshi/
『光をくれた人』
YABO人:灯台守のトムの妻イザベル(アリシア・ヴィキャンデル)
「娘を奪わないで。私がルーシーの母親よ」
戦争に従軍して心に深い傷を負ったトム(マイケル・ファスベンダー)はオーストラリアの孤島で灯台守となる。3カ月後、正式契約で街に戻ったトムは美しく快活なイザベル(アリシア・ヴィキャンデル)と出会い、恋に落ちる。2人は結婚して孤島で幸福に暮らすが、2度にわたる流産がイザベルを襲う。
ある日、島に見知らぬ男の死体と泣き叫ぶ女の子の赤ん坊を載せたボートが流れ着く。イザベルは赤ん坊を娘として育てたいと願い、トムはそれが過ちと知りつつ受け入れる。4年後、2人は愛らしく育った娘ルーシーと幸せに暮らしていたが、トムは偶然、ハナ(レイチェル・ワイズ)という女性が娘の実の母だと知ってしまう。
心に孤独を抱えるトムがイザベルと出会うことで生きる希望を見つけ、どんな状況になっても深い愛でイザベラを守る。切なすぎて涙が止まらない。マイケル・ファスベンダーのファン必見の作品。
イザベルがトムの髭を剃るシーンがあるが、マイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルが提案したという。2人が信頼し合っているのが伝わってくる。
【本編映像】マイケル・ファスベンダー発案!ラブラブひげそりシーン
『光をくれた人』
5月26日(金)TOHOシネマズ シャンテ 他にて公開
監督:デレク・シアンフランス
出演:マイケル・ファスベンダー、アリシア・ヴィキャンデル、レイチェル・ワイズ
配給:ファントム・フィルム
ⓒ 2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC
公式サイト:http://hikariwokuretahito.com/
『ちょっと今から仕事やめてくる』
YABO人:幼なじみを名乗るヤマモト(福士蒼汰)
「人生は誰のためにあると思う? お前を大切に思っている人のためや」
ブラック企業で働く青山隆(工藤阿須加)は、仕事のノルマが厳しく精神的に追い詰められていた。そんなとき大阪弁でいつでも爽やかな笑顔をみせる謎の男、ヤマモト(福士蒼汰)と出会い、本来の明るさを取り戻していった。しかし、ヤマモトは幼馴染みだというが、青山には彼の記憶がまったく無かった。ある日、青山はヤマモトが深刻な表情で墓地行きのバスに乗車するところを見かける。不審に思った青山がヤマモトについて調べてゆくと、何と3年前に自殺していたことが分かる。それではヤマモトと名乗る、あの男は一体何者なのか?
吉田鋼太郎演じる上司が罵詈雑言を浴びせ掛け、青山を追い詰める。このパワハラはわかりやすい。しかし、パワハラを受けているのは青山だけではない。常にトップの営業成績を誇り、社内のエースである先輩も過剰な期待を寄せられ、プレッシャーに押しつぶされそうになる。青山はヤマモトに助けられたが、先輩にはヤマモトがいない。この違いは大きかった。先輩のようにヤマモトがいない人はこの作品をヤマモトの代わりにしてほしい。
母親が電話で「東京の美味しいケーキが食べたい」と伝えたことは、息子が家に帰るいいきっかけとなった。「東京の生活に疲れたら帰っておいで」というより効果がありそうだ。
『ちょっと今から仕事やめてくる』
2017年5月27日全国東宝系にてロードショー
監督:成島出
出演:福士蒼汰、工藤阿須加、黒木華、小池栄子、吉田鋼太郎
配給:東宝
©2017 映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会
公式サイト:http://choi-yame.jp/
『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』
YABO人:絵コンテ作家のハロルド
「脚本に書かれた内容を絵によって高めるべき」
映画リサーチャーのリリアン
「リサーチが映画にリアリティを与え、それが味わい深い物語になる」
絵コンテ作家:言葉で書かれた脚本をカメラの視点で捉え、カットごとにイラスト化した映像の設計図を作成する仕事。構図、カメラワークに加え、レンズ情報、セリフ、尺なども記載する。
映画リサーチャー:映画を作るうえで必要な情報を調査・収集する専門家。物語の構想を練る力の源泉になり、事実を裏付けることで物語にリアリティを与える。
ハロルドとリリアンはハリウッドで駆け落ち同然に暮らし始める。家族を養うために絵コンテ作家になったハロルドは失業と転職を繰り返しながら実績を積み、初めて担当した『十戒』の絵コンテで業界から注目を集める。一方、リリアンは自閉症の子を抱えた専業主婦生活に疲れていた。ハロルドは映画リサーチャーのアシスタントとして働くことを勧める。やがて2人はヒッチコックの『鳥』で夫婦共演を果たし、その後も1960年代~2000年代まで100本以上の作品に携わった。ハリウッド黄金期を駆け抜けたふたりの60年に迫る。
映画『十戒』ではモーゼが海を割り奇跡を起こすシーン。ヒッチコックの名作スリラー『鳥』では逃げ惑う生徒たちを鳥たちが襲うシーン。青春映画『卒業』ではミセス・ロビンソンがベンジャミンをエロティックな脚線美で誘惑するシーン。ハリウッド映画を代表する名シーンはハロルドの絵コンテに基づいて撮影されたのだ。作品では絵コンテと映画のシーンを並べて見せるので、それらの作品を見たことがなくても、その正確さに驚かされる。これはぜひ、ご自身の目で確かめてほしい。ハリウッドの巨匠たちから愛されたのも納得するはず。
『ハロルドとリリアン』
5月27日YEBIS GARDEN CINEMAより全国順次公開
監督・脚本:ダニエル・レイム
エグゼクティブ・プロデューサー:ダニー・デヴィート
出演:ハロルド & リリアン・マイケルソン、フランシス・フォード・コッポラ、
メル・ブルックス、ダニー・デヴィート、アルフレッド・ヒッチコック、デヴィッド・リンチほか
配給:ココロヲ・動かす・映画社○
©adama films 2015. all rights reserved
公式サイト:http://www.harold-lillian.com/