映画『明日にかける橋 1989 年の想い出』鈴木杏さん、越後はる香さんインタビュー

6月30日(土)より東京・有楽町スバル座ほかで『明日にかける橋 1989 年の想い出』が公開されます。本作は、太田隆文氏が監督を務め、日本最大級の規模を誇る静岡県の袋井花火大会を舞台に、現代から1989年にタイムスリップした主人公みゆきが、弟の死の原因となる交通事故を防ぎ、家族の幸せを取り戻そうとする物語。
みゆきを演じた主演の鈴木杏さん、高校時代のみゆきを演じた越後はる香さんにお話を伺いました。

(左:越後はる香 右:鈴木杏)

-みゆきを演じることが決まった時はどのようなお気持ちでしたか?

鈴木杏 弟の死など、過去に起きた出来事や背負ったものが大きいので、そこにフォーカスしすぎるとどこまでも暗く重くなってしまいそうでした。でも、ずっと暗いままだと作品全体とのバランスとも違ってきてしまうと思いました。タイムスリップというコミカルな要素もあり、「再生」という明るい未来を目指していくストーリーなので、あまり重すぎない方がいいのかなと思いつつも、あまりコミカルになりすぎるとリアリティがなくなってしまうので、みゆきをどう演じるか、そのバランスが難しいと思いました。

越後はる香 私はこの作品が初めての出演作だったのですが、オーディションでこの役が決まった時はすごく嬉しかったです。でもその反面、「どうしよう」という緊張や「自分にできるのかな」という不安もありました。

-「みゆきの女性像」についてお二人でお話はされましたか?

鈴木杏 それはあまりしなかったよね。

越後はる香 そうですね、でも、みゆきの癖について話しました。

鈴木杏 タイムスリップした時に、大人のみゆきと高校生のみゆきが対面するシーンがあるのですが、同じ癖をしていることに気づくというのも面白いかなと思い、監督に相談したんです。監督も、みゆき特有の癖があると同一人物だということがより明確になると仰ってくださって、どんな癖がいいか、監督を含めてみんなで相談して決めました。

©「明日にかける橋」フィルムパートナーズ

-スクリーンではみゆきの癖にも注目して欲しいですね。役作りではどのような工夫をされましたか?

鈴木杏 大人になったみゆきは、彼女なりに今を生きている人。過去や家族の現状を背負いつつも、いろんなことが日常になってしまい、ある種の諦めもあるだろうし、変えられるはずがないと思っている人だと思ったので、暗すぎず淡々と演じたいと思いました。タイムスリップによって過去の父親、母親、自分と対面し、人と出会い直すことでみゆき自身もどんどん変わっていく。現場でも共演の方々に対面してしっかりお芝居をもらうということを心がけていました。

越後はる香 80年代後半から90年代の高校生を演じたのですが、私はその時代に生まれていないので、現場に入る前に太田監督から宿題をいただいて、その当時に流行していたものや音楽、ドラマ、映像などを調べました。実は、母がちょうどその時代にみゆきと同じ高校生だったんです。

鈴木杏 そうだったんだ! “リアルみゆき”が居たんだね。

越後はる香 はい。母に当時の話を聞いて、その時代の背景を掴んでいきました。

©「明日にかける橋」フィルムパートナーズ

―お母様が青春を過ごした時代を演じるというのも素敵な巡り合わせですね。撮影で楽しかったシーンや思い出に残っているシーンはありますか?

越後はる香 楽しかったシーンは、教室で、先生役の藤田朋子さんが『バック・トゥ・ザ・フュチャー』の話をするシーンです。藤田さんが現場に入っていらした時に、クラスメイト役のみんなとすごく緊張して固まってしまったのですが、藤田さんが場を和ませてくださったので楽しかったです。思い出に残っているシーンは、弟の健太のお葬式で、藤田さんに「みゆきのせいじゃないんだよ」って言われるシーンですね。

鈴木杏 両親と対面して両親の本心を知っていくというシーンが多かったのですが、父親役の板尾創路さん、母親役の田中美里さんとのシーンが心に残っています。もしかしたら、実生活でも、自分が知っている親の姿は、子供としての目線でしか知らないこともあるんだろうなと思いました。板尾さんや美里さんが醸し出すものに気持ちを引き出してもらった部分が多くて、心強かったです。

©「明日にかける橋」フィルムパートナーズ

―泣けるシーンも多いですが、とくに父と話すシーンは涙が止まらなかったです。演技で支えられた部分はありますか?

鈴木杏 板尾さんの背中を見ているだけで、自然と涙が出てくる部分がすごくありました。自分でこうしよう、ああしようとか、ここで気持ちを高めてとか、そういうのが一切通用しない。自然と気持ちを引き出してもらったことが多かったです。出来上がった作品を見て、板尾さんの佇まいや背中から醸し出されるものにいろんな思いが詰まっていて、佇まいで語る板尾さんの凄さを改めて感じました。これは板尾さんが持っている板尾さんならではの強さでもあるのかなと。

©「明日にかける橋」フィルムパートナーズ

―越後さんは板尾さんや田中さんと共演されてみていかがでしたか?

越後はる香 最初の撮影が家族の食卓のシーンだったのですが、撮影前に板尾さんや田中さんとたくさん話ができたので、みゆきは反抗期で両親とぎこちないという空気感を作りつつ、家族の雰囲気を作れたのかなと思います。

―本作では、舞台となった静岡の袋井市、磐田市、森町の市民の方々も出演されています。静岡での撮影や、街の雰囲気はいかがでしたか?

鈴木杏 あらゆる方面からサポートしてくださって、本当に感謝しています。長期で地方ロケが続くと、いわゆるロケ弁が続いたり、なかなか野菜が食べられなかったりしますが、ケータリングを出してくださったり、お野菜豊富な手作りのものを毎日届けてくださって、そうした心遣いの一つひとつで健やかに撮影ができる、ストレスフリーな状態で撮影に挑めるのは、すごく恵まれた環境だと思いました。待機場所としてお家をお借りすることも多かったのですが、ご迷惑をおかけしているにも関わらず、お菓子を出してくださったり、どこへ行っても温かく迎えてくださって。「街全体、市全体で映画を作る」という気持ちに向かってくださっていたから、同じ方向を向いて一緒に同じ作品を作るという経験をさせてもらえたことに、すごく感謝しています。

越後はる香 最初に街の方とお会いしたときに、すごく温かい雰囲気で迎えてくださいました。毎朝、違う味のおにぎりを用意してくださって、それがすごく楽しみでした。ご飯もすごく美味しかったですし、撮影の合間にも声をかけてくださって、一緒に映画を作っているという感じがして、すごくいい現場だなと思いました。

©「明日にかける橋」フィルムパートナーズ

―静岡のみなさんと一緒に作った大切な映画になりましたね。

鈴木杏 そうですね。出来上がった作品を見て、街全体もそうですが、街の方々が主役であり主演の映画でもあると強く思いました。もちろん、映画は見てくださる方々がいて成り立つものですし、見てくださる方がいないと作れないものですが、作ることにも意味がある、作り手のための映画でもあったのだと、改めて思いました。街を知ってもらうために、街の人たちが発起人となって製作委員会を作り、映画を作る。こうした機会が各地であると、私たちもさまざまな街のことを知れるので素敵なことだと思います。

―この映画をきっかけにそうした取り組みが広がっていくといいですね。これから映画をご覧になる方へメッセージをお願いします。

鈴木杏 家族の話が中心になっているので、老若男女問わず幅広い世代の方に見ていただける映画だと思います。お父さんにはお父さんの、お母さんにはお母さんの感じ方があって、家族でそれぞれの感じ方は違うと思いますが、この映画をきっかけに家族のコミュニケーションがスムーズになってくれたら、こんなに幸せなことはないです。

越後はる香 普段から、家族や友だちには、思っていることのすべてを伝えられないかもしれませんが、この映画を通して、両親はこういうふうに思ってくれているんだなというのを、少しでも感じてもらえたらいいなと思います。そうした思いを心の中に感じて家族や友達と関わっていくと、いろいろ変わっていくのかなと思います。多くの人に見てもらいたいです。

©「明日にかける橋」フィルムパートナーズ

―最後に、今後チャレンジしたい役や、実現したい野望があれば教えてください。

鈴木杏 お芝居はチャンスがあればどんな役でもやってみたいです。今、趣味で絵を描いていて、クラウドファンディングで支援を募って絵の作品集を出そうと取り組んでいます。まだ製本に入る前で、家でちまちま絵を描いて売れない絵描きみたいな生活をしているのですが(笑)。絵を描くのはお芝居とはまったく違う集中力。私のなかで絵に没頭する時間は写経に近い感覚があるんです。絵を描くことでお芝居とのバランスも変わって、一歩一歩進んでいる感じがします。絵はまだ素人ですが、素人に戻れるというか、お芝居の方はプロとしてやらなきゃいけないことがたくさんあるので、それとは違うことをやれているのは新鮮です。違う扉から外の世界に関わるとどうなるのかなと、チャレンジしている途中です。

越後はる香 たくさんの役に挑戦していきたいなと思っています。一つ夢があって、発展途上国の教育支援をしてみたいと思っています。中学生の頃にマララ・ユスフザイさんのスピーチを聞いて、世界には、苦労していたり、教育を受けられなかったりする自分と同年代の子たちがいることを知り、自分の生活が当たり前じゃないというのを感じたんです。教育を受けられないことが親の世代からの連鎖になっていて、それをどこかで止めないとこれからもずっと変わっていかないというのを知り、自分がその連鎖を止めて新しいプログラムを立てていけたらなと思っています。

(鈴木杏 ヘアメイク:宮本愛(yosine.)スタイリスト:小山よし子)
(越後はる香 ヘアメイク:宇賀理絵)
(撮影・インタビュー・文:出澤 由美子)


<PROFILE>
鈴木 杏
1987年4月27日東京都出身。子役時代から注目を浴び、テレビドラマ、映画、舞台、CFと幅広く活躍。2016年には舞台「イニシュマン島のビリー」「母と惑星について、および自転する女たちの記録」で第24回読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。主な映画出演に「花とアリス殺人事件」「軽蔑」など。舞台には「海辺のカフカ」「欲望という名の電車」蜷川幸雄三回忌追悼公演「ムサシ」がある。

▼鈴木杏さんのクラウドファンディングに関する情報はこちら
女優・鈴木杏の内なる情熱をカタチに!イラスト&エッセイ集出版プロジェクト
https://www.booster-parco.com/project/381

越後はる香
2000年10月19日兵庫県生まれ。趣味・特技はチェロ、スキー、乗馬。2017年「ブラックリベンジ」(日本テレビ系)でドラマデビュー。オーディションで勝ち取った今作で映画デビュー。目力と品の良さが光る、今後が期待の新人。


『明日にかける橋 1989年の想い出』

Copyright (C) 2018 『明日にかける橋』フィルムパートナーズ

■STORY
主人公のみゆき(鈴木杏)は30代のOL。とある田舎町で暮らしている。
弟・健太(田崎伶弥)が交通事故で死んでから家族は崩壊。母(田中美里)は病気で入院。父(板尾創路)は会社が倒産、酒に溺れる。みゆきが両親を支え働く日々。
そんな2010年の夏のある日、夢がかなうという明日橋を渡ったことでなんとタイムスリップ!
弟が死んだ1989年に戻ってしまう。バブル全盛の時代。
そこで出会う若き日の両親と元気な弟と若き日の自分(越後はる香)。
みゆきは、もし、この時代で健太を救うことができれば、家族を救うことができるかもしれないと希望を見出すが、その先には、様々な困難が待ち構えていた。

出演:鈴木杏、板尾創路、田中美里、越後はる香、藤田朋子、宝田明ほか
監督・脚本・編集・プロデューサー:太田隆文

6月30日より有楽町スバル座、8月にテアトル梅田、9月1日より静岡県内ほかにて全国順次公開。

公式サイト:http://asunikakeruhashi.com/
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=nb9d7eWbm8k&feature=youtu.be


初日舞台挨拶決定!

6月30日(土) 10:30からの回上映後初日舞台挨拶あり。(上映前予告なし。)
舞台挨拶登壇者(予定):鈴木杏、田中美里、越後はる香、藤田朋子、宝田明、太田隆文監督
会場:有楽町スバル座(千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビルヂング内
JR有楽町駅JR日比谷口 徒歩1分
地下鉄有楽町線 有楽町駅D4番出口 徒歩1分)
※初日舞台挨拶の回のみ入替制となります。
※登壇者は予告なしに変更をする場合がございます。あらかじめご了承願います。
※特別興行の為、株主優待カードはご利用いただけません。
※有楽町スバル座は全席自由席の為、事前には販売しておりません。当日のみ有効のチケットを当日窓口で販売しております。
※混雑状況により、お立見となる場合や、満席の場合はご入場をお断りすることもございます。
お問い合わせ:有楽町スバル座 03-3212-2826

2018-06-24 | Posted in NEWSComments Closed 
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