12月1日公開『探偵はBARにいる3』吉田照幸監督インタビュー

札幌・ススキノを舞台に、街の表も裏も知り尽くした“探偵”と相棒・高田が縦横無尽に活躍する『探偵はBARにいる3』が12月1日(金)の映画の日に公開される。
原作は札幌在住のミステリー作家・東直己の「ススキノ探偵」シリーズで、主人公=探偵を大泉洋、その相棒=高田は松田龍平が演じる。第1作は小雪、第2作は尾野真千子と毎回、美しい依頼人が登場するが、今回は北川景子がモデル事務所のオーナーとして探偵たちを翻弄する。
『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』の舞台挨拶の場で大泉洋自らが「パート3やります!」と公言してから早4年。ファンが待ちわびた今作の見どころを吉田照幸監督にうかがった。

―本作を引き受けたきっかけを教えてください。
『疾風ロンド』が終わったときにオファーを受けました。昨年の6月か7月だったと思います。1作目にあったような笑いや緩さを求めて、『サラリーマンNEO』(NHK)を作った僕に声を掛けてくれたのかなと思いました。

―人気シリーズを3作目から引き受けることでプレッシャーがあったと思いますが、いかがでしょうか。
プレッシャーより大泉洋さんと松田龍平さんがコンビを組む映画を撮れるという嬉しさが勝っていました。

―大泉洋さんとは初めてとのことですが。
思っていた以上にストイックな方でした。演技的には台本をとことん読み、自分が納得できる状態で臨みたいと思っているのを感じましたね。人格的にはスクリーンで見るまま。スタッフにも声を掛け、座長としての振る舞いが素晴らしい方でした。

『探偵はBARにいる3』

©2017「探偵はBARにいる3」製作委員会

―大泉さんは撮影に入る前に体を鍛えてケガをしてしまったと聞きました。
サウナシーンで身体を見せるので、そのために鍛えていたようです。ただ、3日目くらいに撮ってしまったので、そのあとは気にせず食べていましたね。

―大泉さんの裸といえば、お決まりの拷問シーンでも裸になっていました。このシーンは回を追うごとにハードになってきた気がします
台本を読んだときに、「ここは裸になってほしい」と思ったのですが、寒さも知らずに衣装合わせのときに「ここは裸で」と言って拒まれたら、もう言えなくなります。そこで当日まで決めず、一応、肉襦袢とかガウンとか用意していました。ただ、心の底から「裸になってほしい」と思っていたのが通じたのでしょう。大泉さんがしびれを切らしたように「今日の天候なら裸になれます」と言ってくれました。大泉さんの申し出に「ありがとうございます」と言って去っていく僕の後ろ姿が、「やってやった!」という感じだったと後から大泉さんが言っていました。

―監督にとって松田龍平さんとは、2013年のNHK「あまちゃん」以来、2回目です。あの頃と比べていかがでしたか。
変わらないですね。飄々としていて、あまり変わったという印象はありません。違和感のあることは「できない」とはっきり言い、何か考えがあるときは提案もしてくれます。
僕は俳優の方には基本的に自由にやってもらっています。その上で何がいいかは決めさせていただきますが、松田さんは自由にやるタイプですね。ただ、高田の人物像は今までよりも広げたいと話し合いました。かなり変なところに住んでいて、閉鎖的というか、友だちがいない役でしたが、今回は後輩に頼られています。人間っぽさを少しは持ってもいいのかなと思い、女子大生の麗子の部屋を探る時は下着が入っている引き出しを空けてもらいました。そうしたら「おっ」と微妙に反応していましたね。そういう人間的な面も描いたところ、松田さんも「これってありかも」とやっていました。

『探偵はBARにいる3』

©2017「探偵はBARにいる3」製作委員会

―これまで向かうところ敵なしの高田でしたが、今回は高田より強い存在が登場しました。
ずっと無敵よりも、やられるけれど最後にやり返すほうがカッコイイですよね。相手がはいているズボンをずらし、動きを封じて反撃しました。それが最初から意図的だと面白くない。とはいえ無意識も難しい。基本的にテイクは重ねないのですが、あそこはちょうどいい頃合いになるまで、何度もやりましたね。松田さん自身もかなりこだわっていました。細かいのですが、僕はおろした瞬間に、小さくにっと笑う高田の表情が大好きです。

『探偵はBARにいる3』

©2017「探偵はBARにいる3」製作委員会

―探偵とマリが北城に捕らえられ、高田が助けに行きました。そのときに上から飛び降りた高田が探偵と背中を合わせます。決まっていましたね。その後のアクションシーンは『疾風ロンド』のGoProで撮影した雪上アクションを思い出しました。今回はどのように撮影されたのでしょうか
僕としては探偵と高田が背中を合わせるシーンがどこかでほしかった。飛び降りからの背中合わせというイメージがあって、そういうカッコよさがこのコンビの良さですから、あのシーンを「きた!」と見ていただけたなら成功ですね。
あのアクションシーンは俳優がスローに動き、パンチやキックは本当に当てました。当てたのがわかるから迫力が出るのです。やられている人の力も大きいですけれどね。またカットを割ると作為が見えてしらけるので、ワンカットで撮っています。なので長い時間、誰もミスが許されません。緊張して何とかこのシーンを成立させようといった全員の空気が、一体感をうんでました。ゆっくり動くのはけっこうきついので、お二人はかなり体力を消耗したようですが、いい感じに仕上がったと思っています。

―高田が飛び蹴りをするときに「トゥ」と掛け声を出していましたが、緩い感じで高田らしいですね。
「トゥ」を言ったのは松田さんですが、本当に「トゥ」を入れていいのかはかなり議論になりました。ライダーキックですが、ちょっと気の抜けた「トゥ」で、まさに高田のキャラです。

―今回の依頼人を演じた北川景子さんはアクションシーンもご自身でされたと聞きました。
リリーさんが北川さんの髪をつかんで投げ飛ばすシーンがあり、「北川さんの顔を傷つけては困る」とリリーさんはかなり心配されていました。しかし北川さん本人は「危険だからやりません」というタイプではありません。最初はソファーに向かって投げたのですが、迫力に欠けたので「もっと強くやってください」と、今度はガラステーブルに向って投げてもらいました。今、考えると危ないですが、撮っているときは気づきませんでした。
クライマックスの「ぶっ殺すぞ」というセリフを北川さんは楽しみにしていました。いままで、そういうセリフのある役がなかったようです。テストのときから100%の声を出し、最後の方は「声がギリギリです。あと2回くらいしか大声が出せません」と言われたくらい。よっぽどきにいってたんですかね(笑)

『探偵はBARにいる3』

©2017「探偵はBARにいる3」製作委員会

―クライマックスのシーンはのべ2000人のエキストラの方々が参加したそうですね。
大ショッピングモール「サッポロファクトリー」の営業時間中に2日間かけて撮影し、1回に1000人参加してもらいました。
この作品は大泉さんが北海道出身で、他のスタッフにも北海道出身者が多く、郷土に対する思いや愛にあふれています。そのため、他のところで撮れるシーンも基本的には札幌で撮る。ショッピングモールは雪が映っているわけではありませんから、東京近郊で撮ってもよかったのですが、それでは違う。札幌に来た人が「ああ、あそこだ」というところで撮る。1000人ものエキストラも自分たちの街で撮っていると思うから集まってくれたのだと思います。札幌でなければ絶対に撮れなかったシーンです。
観覧車も営業中に、探偵とマリと僕とカメラマンの4人だけで撮りました。上り始めたら「用意、スタート」で、降り始めたらカットかけて、降りる間にごそごそカメラポジション変えて、また上り始めたら、「用意、スタート」です。とても映画とは思えないバラエティみたいに撮影してたのに、結構良いシーンになりました。

『探偵はBARにいる3』

©2017「探偵はBARにいる3」製作委員会

―キャッチコピーは「命を燃やすものは、あるか?」です。監督には命を燃やすものはありますか。
物語でしょうか。笑いの番組を作っていたとき、自分はどこか門外漢というか、コンプレックスがありました。しかし、ドラマや映画をやり始めてからは、本当に充実していますね。だから今、こうして毎日、忙しくても生きていられる。「命を燃やしているか」と聞かれると戸惑いますが、燃焼はしていますね。

―今後の監督の野望をお聞かせください。
野望ですから、無理難題的な、大きいことですよね。それなら「ハリウッド」です。現在、ハリウッドではアメリカ人以外の監督ががんばっています。僕も2年後くらいにはハリウッドに通用する作品を作ってみたいですね。

吉田照幸監督

吉田照幸監督
1969年生まれ、山口県出身。93年NHK入局。「のど自慢」「小朝が参りました」などエンターテイメント系の番組に携わる。04年に企画した「サラリーマンNEO」がNHKとして型破りな番組として人気を博す。以後全シリーズの演出を担当し、11年には『サラリーマンNEO劇場版(笑)』で映画初監督を務める。13年には日本中にブームを巻き起こした連続テレビ小説「あまちゃん」の演出を担当。現在NHKエンタープライズ所属。近作では、コント番組「となりのシムラ」や、ドラマ「洞窟おじさん」(第70回文化庁芸術祭テレビ・ドラマ部門優秀賞受賞)、「富士ファミリー」、「獄門島」を演出。本作は『疾風ロンド』(16)につづいて、自身3作目の映画監督作品となる。

『探偵はBARにいる3』

『探偵はBARにいる3』

©2017「探偵はBARにいる3」製作委員会

<STORY>
悲しくも激しい【最後の事件】が始まった。
なじみのクラブで、いつも通りのバカ騒ぎをする探偵(大泉洋)のもとに舞い込んだ依頼。依頼主は高田(松田龍平)の後輩=原田(前原滉)で、突然失踪した恋人の麗子(前田敦子)を探してほしいというもの。暇つぶしにと軽い気持ちで依頼を受けた探偵は、麗子が“ピュアハート”というモデル事務所を装った風俗店でアルバイトしていたことを知る。そしてその店のオーナーと名乗る美女=岬マリ(北川景子)と偶然すれ違い、かすかな既視感を覚える探偵。ほどなくマリが、屈強な男たちを引き連れて探偵と高田の前に現れる。店を嗅ぎまわっていたことがばれ、ボコボコにされる2人。これまで無敗を誇る高田ですら、波留(志尊淳)という青年を前に完敗し、事態は一気にただならぬ様相を呈する。それでも懲りずに調べを続ける探偵は、昔なじみのヤクザの相田(松重豊)や、新聞記者の松尾(田口トモロヲ)というおなじみのメンバーから、“ピュアハート”のバックには、札幌経済界で頭角を現している北城グループの社長=北城(リリー・フランキー)という黒幕がいることを聞き出す。マリは北城の愛人だった。そこでマリと以前に会っていたことを、ようやく思い出す探偵。なじみの元娼婦・モンロー(鈴木砂羽)がかわいがっていた、今にも倒れそうに震えていた若い女性の姿――。「あれか…?あれが、マリか…?」不審に思いながらも、マリの巧妙な罠に落ちる探偵は、北城のサディスティックな拷問を受け文字通り死にかける…が、高田と共になんとかピンチを切り抜け生還。しかし今度はマリ共々、北城に追われるハメに。そんな探偵にマリはある依頼をする。それはマリのすべてをかけた切なすぎる依頼。そして、探偵と高田の“別れ”の時が近付いていた。

12.1‐映画の日‐ ROADSHOW!!
監督:吉田照幸
脚本:古沢良太
出演:大泉洋 松田龍平 北川景子 前田敦子 鈴木砂羽 リリー・フランキー
田口トモロヲ 志尊淳 マギー 安藤玉恵 正名僕蔵 篠井英介 松重豊
野間口徹 坂田聡 土平ドンペイ 斎藤歩 前原滉 天山広吉 片桐竜次
配給:東映
©2017「探偵はBARにいる3」製作委員会
公式サイト:http://www.tantei-bar.com/ 

2017-11-30 | Posted in NEWSComments Closed 
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