YABOサタデー映画館―2017.9.23

『YABO』の由来は野望。
野望という強い意志を持って前向きに生きる人を取材し、その人の魅力や情報を発信するフリーペーパーです。
WEB版では毎週土曜日に「YABOサタデー映画館」を掲載。
作品をあらすじとともに野望や希望、理想にあふれる人物をYABO人としてピックアップします。

今週は下記の8作品をご紹介します。
『あさひなぐ』
『スイス・アーミー・マン』
『オペレーション・クロマイト』
『ジュリーと恋と靴工場』
『チェイサー』
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
『仁光の受難』
『プラネタリウム』

『あさひなぐ』

『あさひなぐ』

©2017 映画「あさひなぐ」製作委員会 ©2011 こざき亜衣/小学館

YABO人:二ツ坂高校へ入学したばかりの東島旭(西野七瀬)
運動音痴で、中学では美術部だったが、1つ先輩の宮路真春(白石麻衣)の凛とした美しさと圧倒的な強さに魅了され、高校ではなぎなた部に入る。しかし、「練習は楽で、運動神経がなくても大丈夫」という誘い文句とは違い、過酷な稽古に耐え、3年生にとって最後となるインターハイ予選を迎える。順調に勝ち進むが、一年生エース・一堂寧々(生田絵梨花)を擁した國稜高校に決勝戦でまさかの敗北を喫する。「次は絶対に負けたくない」。夏合宿で山奥の尼僧・寿慶(江口のりこ)の厳しいしごきを受け、秋の大会に挑んだ。

映画化作品を輩出してきた小学館漫画賞を受賞した人気コミック「あさひなぐ」(原作:こざき亜衣/小学館/「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)が、ついに映画化。主演の西野七瀬を始め、桜井玲香、松村沙友理、白石麻衣、伊藤万理華、生田絵梨花、中田花奈、斉藤優里といった乃木坂46のメンバーが多数出演する。背筋がすっと伸びた道着姿は魅力的で、ファン向けの作品に思われがちだが、乃木坂46を知らなくても大丈夫。高校生を描くことに定評のある英勉監督がメガホンを執り、部活に燃える女子高生の青春をコメディー要素も挟み込みながらみずみずしく描いた。高3が公式戦を終えて泣く姿は、運動部経験者でなくとも胸が熱くなる。そして主人公が特訓した成果が実を結んだときには、思わず「よし!」とガッツポーズをしてしまいたくなるかもしれない。

『あさひなぐ』
9月22日(金) 全国ロードショー
脚本・監督:英勉
出演:西野七瀬 桜井玲香 松村沙友理 白石麻衣 伊藤万理華 富田望生 生田絵梨花
中村倫也 森永悠希  角替和枝 江口のりこ
配給:東宝映像事業部
©2017 映画「あさひなぐ」製作委員会 ©2011 こざき亜衣/小学館
公式サイト: http://asahinagu-proj.com/

『スイス・アーミー・マン』

『スイス・アーミー・マン』 

©2016 Ironworks Productions, LLC.

YABO人:無人島に漂着したハンク(ポール・ダノ)
遭難して無人島に漂着し、どんなに待っても助けが来ない。諦めて自殺しようとしたときに、スイス・アーミー・ナイフ(十徳ナイフ)のような万能性を備えた死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。その死体が腐敗したガスをジェット噴射のように出し、沖に向かって進んでいくのを見て、ジェットスキー代わりにして島を脱出する。そして死体にメニーと名前を付けて、サバイバルな旅を続ける。

<死体のメニーが持つ便利な機能>
・カッター機能:研ぎ澄まされた歯は何でも切れる
・髭剃り機能:歯を使って、日々伸びる髭を剃る。
・水筒機能:雨水を体内に貯めこみ、胸を押して逆噴射させて利用する。
・シャワー機能:水筒を調節するとシャワーにもなる。
・会話機能:意志を持っているので、会話が可能。
・銃機能:口からガスを噴射して銃代わりにできる。
・火打石機能:死後硬直した指は広げた反動で火花を散らす。
・斧機能:死後硬直した腕は大木も割る。
・ジェット噴射機能:腐敗したガスが漏れた勢いで飛行も可能。
・バーナー機能:腐敗したガスを着火させることで炎を吹き出す。

主演のダニエル・ラドクリフはまさかの死体役。ハンクとともに旅をするうちに会話ができるようになるが、それはハンクが心の声を死体のメニーに話させた妄想なのだろう。ハンクはメニーと語ることで自分に向き合い、変わっていく。内向的だった彼がラストに取った行動を成長といえるかどうかは微妙だが、行動を起こせるようになったことは確かだ。

『スイス・アーミー・マン』
9月22日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
監督・脚本:ダニエルズ(ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン)
出演:ダニエル・ラドクリフ、ポール・ダノ、メアリー・エリザベス・ウィンステッド ほか
配給:ポニーキャニオン
©2016 Ironworks Productions, LLC.
公式サイト: http://sam-movie.jp/

『オペレーション・クロマイト』

『オペレーション・クロマイト』

© 2016 TAEWON ENTERTAINMENT. All Rights Reserved

朝鮮戦争で連合軍は当初、北朝鮮に対し劣勢だった。戦局はクロマイト作戦(仁川上陸作戦)によって一変した。1/5000の成功率といわれたこの作戦の成功の前に、北朝鮮への命懸けの潜入作戦があった。潜入を決行した今は名もなき兵士たちの実話をベースに、連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーが実施したクロマイト作戦を描く。

YABO人:チャン・ハクス(イ・ジョンジェ)
北朝鮮潜入作戦のリーダーとして、部隊とともに仁川に置かれた朝鮮人民軍の司令部に潜入する。仁川上陸作戦を成功させる最終目的のために仲間が次々と命を落とす極限状況下で、数え切れないほどの英雄的な偉業を成し遂げる。

前半は情報を引き出したいチャン・ハクスと北側の司令部との心理戦が中心。チャン・ハクスは感情を押し隠しているが、ふとした瞬間に本心をちらりと出し、観ているものをどきどきさせる。演じたイ・ジョンジェの細やかな演技の表れだ。
マッカーサーはワシントンの軍首脳から反対されたクロマイト作戦にこだわった。軍首脳がマッカーサーを諫めるために送った3人の将軍から「大統領になりたいから大きな結果を残したいのでは」と言われるが、マッカーサーには別の思いがあったと描く。その思いのきっかけとなるチャン・ハクスとの邂逅が泣ける。リーアム・ニーソンはマッカーサーを演じたため、諜報作戦で実際に動くことがないのが残念だが、この邂逅シーンで印象を残す。

『オペレーション・クロマイト』
9月23日(土)よりシネマート新宿・シネマート心斎橋ほか順次公開
監督:イ・ジェハン
出演:イ・ジョンジェ、イ・ボムス、リーアム・ニーソン、チン・セヨン、チョン・ジュノ、パク・チョルミン、パク・ソンウン、ジョン・グライス、秋山成勲
配給: クロックワークス
© 2016 TAEWON ENTERTAINMENT. All Rights Reserved
公式サイト: http://pacific-war-movie.com/operationchromite/

『ジュリーと恋と靴工場』

『ジュリーと恋と靴工場』

© 2016 LOIN DERRIÈRE L’OURAL – FRANCE 3 CINÉMA – RHÔNE-ALPES CINÉMA

YABO人:田舎町に住むジュリー(ポーリーヌ・エチエンヌ)
職なし、金なし、彼氏なしの25歳。就職難の末ようやく、フランス・ロマンにある高級靴メーカーの工場で倉庫係助手として試用採用を手にする。しかし、その工場は近代化の煽りを受けて閉鎖の寸前だった。靴職人の女たちが迫る近代化の波でリストラされることを恐れ、抗議のためパリ本社に乗り込み騒動を起こす。それに巻き込まれて、危うくクビになりかけるが、女性靴職人たちとともに“戦う女”と名付けられた“赤い靴”を復活させ、この危機を乗り越えようとする。その一方、自由を求める運転手サミーに強く惹かれていく。

靴工場を舞台に、“戦う女”を履いた女性たちが人生を切り開くフレンチ・コメディ・ミュージカル。『ラ・ラ・ランド』のように若いフリーターの女の子が自立していく姿を描くが、主人公に力みがなく、自然な感じに脱力している。現実に夢が持てないイマドキの女の子らしい。ラストの選択はちょっと意外だが、安定=幸せという型にはまった価値観を捨て、その先に広がるかもしれない可能性に身を任せた。この先、どんなことが起こってもこの主人公なら乗り越えていくに違いない。

『ジュリーと恋と靴工場』
9月23日(土)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開
脚本・監督:ポール・カロリ、コスティア・テスチュ
出演:ポーリーヌ・エチエンヌ、オリヴィエ・シャントロー、フランソワ・モレルほか
提供:ギャガ、ロングライド
配給:ロングライド
© 2016 LOIN DERRIÈRE L’OURAL – FRANCE 3 CINÉMA – RHÔNE-ALPES CINÉMA
公式サイト: http://julie-kutsu.com/

『チェイサー』

『チェイサー』

YABO人:シングルマザーのカーラ(ハル・ベリー)
赤のミニバンに乗って、6歳になる一人息子のフランキー(セージ・コレア)と公園で楽しいひとときを過ごしていたが、携帯で弁護士との会話中に息子の姿を見失ってしまう。必死に息子を探していると、駐車場で見知らぬ長髪の男・テリー(リュー・テンプル)がフランキーを乗用車に押し込んでいる姿を発見。走り出した車にしがみつくが振り落とされ、携帯を落としたまま、自分の車で決死の追跡を開始する。

カーラはダイナーでウェイトレスとして働く普通の母親。『96時間』でリーアム・ニーソンが演じた元CIA工作員が持つ長年のキャリアの中で手にしたスキルといったものはない。あるのは息子を思う気持ちだけ。しかし、その気持ちがいちばんの武器。警察が頼りにならないとわかると、危険を顧みずにひたすら犯人の車を追う。アップで映し出される表情は歯を食いしばっているか、犯人に向かって大声で叫んでいるかのどちらかだ。そんな鬼気迫る勢いの母親をハル・ベリーが体当たりで演じている。

『チェイサー』
9月23日(土)全国ロードショー
監督:ルイス・プリエト
出演:ハル・ベリー リュー・テンプル セージ・コレア
配給:プレシディオ
公式サイト: http://chaser-movie.net/

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

©2017「ナミヤ雑貨店の奇蹟」製作委員会

YABO人:敦也(山田涼介)
かつて暮らしていた児童養護施設・丸光園がある女性起業家によって廃園に追い込まれていると聞く。一緒に育った翔太(村上虹郎)、幸平(寛一郎)と3人で、その起業家を懲らしめようと自宅に侵入。起業家本人(尾野真千子)と出くわし、彼女を椅子に縛り付けて逃げ出した。ところが逃走用の車がエンスト。仕方なく、翔太が見つけた元雑貨屋だった空き家に忍びこみ、一夜を過ごすことにする。すると、廃業したはずの店のシャッターの郵便口から突然、32年前の悩み相談の手紙が舞い込んでくる。家の中にあった古い週刊誌の記事から、そこはかつて店主・浪矢雄治(西田敏行)が悩み相談を請け負っていたナミヤ雑貨店と知り、悩み相談の返事を書く。時を越え、手紙のやり取りをするうちに、相談者たちから届く手紙と自分たちとの不思議な共通点に気付く。

世界累計800万部を突破し、「東野圭吾史上、最も泣ける感動作」と発売より高い支持を受ける小説「ナミヤ雑貨店の奇蹟」が待望の映画化。
3人の若者は、実家が魚屋の売れないミュージシャン、叔母夫婦に育てられ後、事務職と水商売を掛け持ちする女性の悩み相談を受け、30年の時を超えて手紙をやりとりする。その結果が思わぬ形で若者たちに繋がっていく。どんな悩みにも真剣に向き合ってきたナミヤ雑貨店の店主も相談主のその後を未来からの手紙で知り、安堵する。人情の機微を丁寧に描き、松竹らしい良さにあふれた作品に仕上がった。
作品内で魚屋のミュージシャンが作り、彼と知り合った少女が歌い継ぐ歌は山下達郎が本作のために書き下ろしたもの。エンディングに山下達郎の声で流れてくると、物語の感動がさらに大きくこみ上げてくる。

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
9月23日(土)より全国ロードショー
監督:廣木隆一
原作:東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』角川文庫刊
出演:山田涼介
村上虹郎 寛 一 郎 成海璃子 門脇麦
林遣都 鈴木梨央 山下リオ 手塚とおる PANTA
萩原聖人 / 小林薫 / 吉行和子
尾野真千子 / 西田敏行
配給:KADOKAWA/松竹
©2017「ナミヤ雑貨店の奇蹟」製作委員会
公式サイト: http://namiya-movie.jp/

『仁光の受難』

『仁光の受難』 

© TRICYCLE FILM

YABO人:仁光(にんこう)(辻岡正人)
勤勉な修行僧で、なぜか女に異常にモテる。町の若い娘から、熟れた女房、枯れ果てた老女にいたるまで、夢中になって群がってくる。ある日の逢魔ヶ刻(おうまがどき)、不思議な少女に出逢い、その魔性を開花させてしまう。周囲を惑わす自らの不徳を恥じ、己を見つめ直すための旅に出る。道中知り合った浪人・勘蔵(岩橋ヒデタカ)と共に山を越え、とある寒村にたどり着く。そこでは村人たちが、男の精気を吸い取って殺すという妖怪(あやかし)・山女(やまおんな)に頭を悩ませており、山女の退治を頼まれる。

監督は今作が長篇初監督作品の庭月野議啓(にわつきの のりひろ)。僧侶と人斬りと妖怪が邂逅する怪談を、実写とアニメーションを交えて描き、完成までに4年かけて自主映画と呼ぶには完成度の高い本格時代劇に仕立て上げた。バンクーバー国際映画祭でワールドプレミア上映後、その評判は瞬く間に世界中に広がり、釜山国際映画祭、東京フィルメックス、ロッテルダム国際映画祭などに出品され、満を持して劇場公開となった。「ボレロ」が流れる中、実写と動き出す曼荼羅や浮世絵が入り乱れて作り出す摩訶不思議な世界観。群がる女性たちから仁光が必死に逃げるエロティックな可笑しさ。どれもが斬新さにあふれている。

『仁光の受難』
9月23日(土)、角川シネマ新宿にて公開
監督・脚本・編集・VFX・アニメーション:庭月野議啓
出演:辻岡正人 若林美保 岩橋ヒデタカ 有元由妃乃
配給:ポニーキャニオン
© TRICYCLE FILM
公式サイト: http://ninko-movie.com/

『プラネタリウム』

『プラネタリウム』

YABO人:ローラ(ナタリー・ポートマン)
妹のケイト(リリー=ローズ・デップ)が死者を呼び寄せる降霊術を披露するショーを仕切り、2人でアメリカ人スピリチュアリスト・バーロウ姉妹として金を稼いでいた。ヨーロッパツアーで行ったパリで、フランス人映画プロデューサーのコルベン(エマニュエル・サランジェ)と出会う。コルベンの誘いで映画に出演し、若き俳優フェルナン(ルイ・ガレル)との熱いキスを演じたことで女優として目覚め、野心をむきだしにしていく。そしてコルベンが男女の区別なく火遊びを楽しんでいることを知りながらも惹かれていった。ところが、コルベンがケイトと強い信頼関係を結んでいくのを目の当たりにし、激しく嫉妬する。

YABO人:フランス人映画プロデューサーのコルベン(エマニュエル・サランジェ)
新しい技術や発想で、新しいフランス映画を開発するという夢を抱いていたときにローラとケイトに出会う。姉妹が行ったセッションで不思議な体験をし、その才能に魅せられ、誰もやったことのない世界初の映画として、姉妹の力で呼び寄せた霊をフィルムに活写させようと思いつく。やがて降霊術力があるのは妹のケイトの方だと確信し、有害な電磁波を放つ機械をケイトに使って実験を繰り返す。次第に、映画作りに狂気を伴っていき、同僚や監督たちから狂人扱いされるようになる。

ケイトの降霊術力をきっかけにローラとコルベンが出会う。ローラはコルベンに魅かれるようになるが、コルベンはケイトの力を求めていく。見えないものを見せようとするケイトとコルベン。見えないものは信じないローラ。考え方の相違が信頼関係に亀裂が生じさせた。そこに1930年代という時代の波が押し寄せる。運命に翻弄される姉妹をナタリー・ポートマンが艶やかに、リリー・ローズ・デップに純真無垢に演じた。

『プラネタリウム』
9月23日(土)より新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて全国ロードショー!
監督:レベッカ・ズロトヴスキ 脚本:レベッカ・ズロトヴスキ、ロバン・カンピヨ
出演:ナタリー・ポートマン、リリー・ローズ・デップ
配給:ファントム・フィルム
公式サイト: http://planetarium-movie.com/

2017-09-24 | Posted in NEWSComments Closed 
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