YABOサタデー映画館―2017.8.26
『YABO』の由来は野望。
野望という強い意志を持って前向きに生きる人を取材し、その人の魅力や情報を発信するフリーペーパーです。
WEB版では毎週土曜日に「YABOサタデー映画館」を掲載。
作品をあらすじとともに野望や希望、理想にあふれる人物をYABO人としてピックアップします。
今週は下記の5作品をご紹介します。
『エル ELLE』
『ワンダーウーマン』
『幼な子われらに生まれ』
『関西ジャニーズJr.のお笑いスター誕生!』
『ハイジ アルプスの物語』
『エル ELLE』
一人で暮らすミシェル(イザベル・ユペール)が洗練された邸宅で覆面の男に襲われる。その後、送り主がわからない嫌がらせメールが届き、自宅に誰かが侵入した形跡が残される。自分の生活リズムを把握しているかのような犯行に周囲を怪しむが、警察に通報せずに自ら犯人を探し始める。だが、次第に明かされていくのは、事件の真相よりも恐ろしいミシェルの本性だった。
YABO人:ミシェル(イザベル・ユペール)
新鋭ゲーム会社のワンマン社長。新作ゲームのプレビューに参加し、容赦ないダメ出しをするので、社員から嫌われている。売れない小説家の元夫が持ち込んだゲームの企画もあっさり切り捨てた。フリーターだった息子は恋人の妊娠をきっかけにファストフード店で働き始めるが、息子の彼女はミシェルの財産を狙っていると考えている。年老いた母親の若い恋人にも「金銭目当て」と刺々しい態度で接する。父親にまつわる過去の衝撃的な事件から、警察が関わることを好まず、犯人をあぶり出すために罠を仕掛けていく。
ポール・ヴァーホーベン監督は本作をアメリカで制作する予定だったが、主演を引き受ける女優が見つからなかったという。そんなとき、原作を読んだイザベル・ユペールから逆オファーがあり、フランスで撮影された。イザベル・ユペールは実はすでに60代だが、まったくそれを感じさせない。少女のような無邪気さと大人の妖艶さでミシェルを演じた。
衝撃的な事件が起こって物語は終わりを迎える。それは果たして偶然だったのか、必然だったのか。監督はあえて説明しない。鑑賞後もしばらく物語が頭から離れないだろう。
『エル ELLE』
8月25日(金)ロードショー
監督:ポール・ヴァーホーベン
出演:イザベル・ユペール、ローラン・ラフィット
配給:ギャガ
© 2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS– TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION – FRANCE 2 CINÉMA – ENTRE CHIEN ET LOUP
公式サイト:http://gaga.ne.jp/elle/
『ワンダーウーマン』
YABO人:ダイアナ(=ワンダーウーマン)(ガル・ガドット)
外界とは隔絶された特別な島パラダイス島に暮らす女性だけの種族・アマゾン族のプリンセス。その島で生まれた唯一の子ども。母である女王の意志に逆らい、偉大な戦士になりたいと願う。叔母のアンティオペ将軍から密かに戦士としての教育を受けた。
ある日、海に不時着したアメリカ人パイロットのスティーブ・トレバー大尉を助ける。生まれて初めての男性に驚くものの、毒ガス爆弾を使ったドイツの恐ろしい計画を阻止しようとしているスティーブに賛同。ともに島を出てロンドンに向かう。
ロンドンでも島にいたときと同じように行動して周りの人々が戸惑わせるが、スティーブや彼の仲間に助けられながら馴染んでいく。しかしドイツとの休戦協定交渉中のイギリス議会がスティーブの計画を却下。議会のリーダーの個人的な協力のもとで仲間と毒ガス工場を破壊にしに行く。傷ついた戦士や苦しむ街の人々の姿を見て、放っておけなくなり、最前線にたった一人で飛び込んだ。
ワンダーウーマンの鍛え上げられた身体と他の追随を許さない強さに圧倒される。腕に覚えがあるはずのスティーブでさえ、下手に強がらず、任せてしまうほど。その一方で、初めて経験する回転ドアに戸惑う姿や人を疑うことを知らない笑顔を見ると守ってあげたくなる。このギャップが見る者の心をつかみ、オープニング成績が全米初登場№1を記録。
そんな魅力たっぷりのダイアナを演じるのはガル・ガドット。母国イスラエルで約2年間の兵役を経験したことがあるそうだが、本作のために5カ月かけてアーチェリー、剣さばき、乗馬、格闘技のトレーニングを行い、戦士にふさわしい肉体を作り上げた。その美しさは男性だけでなく、女性も惹きつける。男性優位の面倒くさい社会に生きる女性たちにエールを送っているのを感じた。
もちろん男性陣にも見せ場はある。スティーブが最後に「僕は今日を救う、君は世界を救え」と言って取った行動は、ダイアナの魅力とは違う形で女性の心をつかむだろう。メインビジュアルにガル・ガドットがバーンと出ているので男性向けの作品に見えるが、実は性別に関係なく楽しめる作品になっている。
ところで、日本にも『美少女戦士セーラームーン』というコミック原作の正義の味方がいる。主人公の月野うさぎは「月のプリンセス」で、天然なくらい真っすぐな心が人々の心をつかんだ。ギリシャ神話に由来するなど似ているところがある。日米の闘うヒロインの対比といった視点でこの作品を観てもおもしろいかもしれない。
『ワンダーウーマン』
8月25日(金) 全国ロードショー
監督:パティ・ジェンキンス
出演:ガル・ガドット、クリス・パイン、ロビン・ライト、ダニー・ヒューストン ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNEENTERTAINMENT LLC
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/wonderwoman/
『幼な子われらに生まれ』
バツイチの田中信(浅野忠信)は子連れの奈苗(田中麗奈)と再婚。良きパパを装っているが、実際は妻の連れ子とうまくいかず、悶々とした日々を過ごす。キャリアウーマンの元妻・友佳(寺島しのぶ)との間にもうけた実の娘と3カ月に1度会うことを楽しみにしている。
そんなとき奈苗に新しい生命が宿る。それを知った血のつながらない長女はより辛辣になり、「やっぱりこのウチ、嫌だ。本当のパパに会わせてよ」と言い出した。信は今の家族に息苦しさを覚え始め、怒りと哀しみを抱えたまま半ば自暴自棄で、長女を奈苗の元夫・沢田(宮藤官九郎)と会わせようとする。
YABO人:奈苗(田中麗奈)
夫のDVに耐えかねて、2人の娘を連れて離婚。同じくバツイチの田中信(浅野忠信)と再婚した。男性に寄り添いながら生きるタイプの女性で専業主婦。信との子どもが授かったことが分かると、娘たちの気持ちを考えずに妊娠を告げてしまう。妊娠高血圧症がわかったときも自分から対処法を探すのではなく、ただ信に「どうしたらいい?」と寄りかかる。
一度、家族を壊してしまったことのある人々が、もがきながら生きる今を映し出す。
家庭第一で良き父親として振る舞う信も、けっして完璧な人間ではない。家庭第一としたことで会社ではリストラにあう。奈苗の連れ子に反抗され、沢田に娘と会うことを頼めば拒否される。我慢を重ね続けた心のストッパーが壊れてしまうのも無理はない。状況に応じた心境の変化を、浅野忠信が見事に表現する。一方、気ままに生きてきた沢田にも変化が現れた。デパートの屋上でベンチに座る沢田の背中からは哀愁がにじみ出る。宮藤官九郎にドンピシャのはまり役だ。
『幼な子われらに生まれ』
8月26日(土)テアトル新宿・シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
監督:三島有紀子(「幸せのパン」「繕い裁つ人」)
原作:重松清「幼な子われらに生まれ」(幻冬舎文庫刊)
出演:浅野忠信 田中麗奈/水澤紳吾 池田成志 鎌田らい樹 新井美羽/宮藤官九郎 寺島しのぶ
配給:ファントム・フィルム
©2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会
公式サイト:http://osanago-movie.com/
『関西ジャニーズJr.のお笑いスター誕生!』
高浜優輔(西畑大吾)と稲毛潤(藤原丈一郎)はお笑い養成所に通い、「エンドレス」を結成する。同期の「ピンクらくだ」(向井康二、室龍太、草間リチャード敬太)はよきライバル。まずはエンドレスが新人芸人の登竜門のコンテストで優勝し、TV局からも声が掛かり始めた。しかし、いつの間にか「売れることが全て」と考えるようになった高浜と、純粋にお笑いが好きな稲毛は気持ちがすれ違うようになる。その頃、エンドレスの後塵を拝していたピンクらくだが突然ブレイク。人気下降にいらだつ高浜を見て、稲毛は密かに“コンビ解散“を考え始めた。そんな稲毛の気持ちに気づくこともなく、高浜はデビュー5周年を機に漫才強化合宿を提案。琵琶湖湖畔に建つ旅館「たつのや」を訪れるが、そこは高浜にとって子どもの頃の思い出の宿だった。
YABO人: 稲毛潤(藤原丈一郎)
高浜優輔(西畑大吾)とは幼馴染みで、2人とも笑わせることが大好き。笑いで人を幸せにしたいと思い、高校卒業後、一緒にお笑い養成所に通って「エンドレス」を結成。しかし、人気下降にいらだつ高浜を見て、「自分は高浜のお荷物になっているのではないか」と悩み、漫才強化合宿で高浜に解散を伝えようと思っている。
『関西ジャニーズJr.の京都太秦行進曲!』、『忍ジャニ参上!未来への戦い』、『関西ジャニーズJr.の目指せ♪ドリームステージ!』に続く、松竹コラボ映画第4弾。
関西ジャニーズJr.のメンバーは青春スター、忍者、ミュージカルに続き、漫才に挑んだ。お笑いはネタさえ面白ければ笑えるということはない。話し方、間の取り方などの絶妙なバランスで生み出される。脚本は「エンドレス」と「ピンクらくだ」がライバルとして競い合い、悩みながら、互いに夢に向かって成長していく姿をボケとツッコミに、涙も加えて描いている。「お笑い」のスキルの高い彼らにとっても、これまでよりハードルが高かったに違いない。しかし、室、藤原、草間は漫才トリオを組んで実際に舞台に立つこともあるだけに、メインキャストの面々はきっちりと仕事をこなす。エンドレスの2人がクライマックスに見せる掛け合いは笑ったあとに胸が熱くなった。アイドル映画と思わずに観てほしい。
『関西ジャニーズJr.のお笑いスター誕生!』
8月26日(土)より全国ロードショー
監督:石川勝己
出演:西畑大吾 向井康二 室龍太 藤原丈一郎 草間リチャード敬太
正門良規 小島健 / 道枝駿佑 長尾謙杜 高橋恭平 嶋﨑斗亜
濱口優(よゐこ) 中西茂樹・那須晃行(なすなかにし) / 浜中文一
森脇健児 森口瑤子
製作・配給:松竹
©松竹
公式サイト:http://statan.jp/
『ハイジ アルプスの物語』
YABO人:ハイジ(アヌーク・シュテフェン)
幼いころに両親を亡くす。代わりに育てていた叔母に都会の仕事が見つかり、アルプスの山に住む祖父(ブルーノ・ガンツ)に預けられる。山の生活に馴染んだころ、突然、大富豪のお嬢様のクララ(イザベル・オットマン)の話し相手として、フランクフルトの都会へ連れていかれた。足が悪く車いす生活を送っていたクララは、明るく素直なハイジに励まされて元気を取り戻していくが、ハイジは山へ帰りたいという想いが強くなっていた。そんな時、屋敷で幽霊騒動が持ち上がる。
ハイジと聞けば、アニメ「アルプスの少女ハイジ」を思い出す人が多いだろう。スイス生まれのアラン・グスポーナー監督も子どもの頃に日本製アニメ「アルプスの少女ハイジ」を観て育ったという。ハイジがペーターのおばあさんのために白パンを引き出しにため込んだ有名なエピソードはもちろん、原作にはあるが、日本のアニメでは描かれなかったエピソードもしっかり盛り込み、2時間弱にまとめ上げた。アニメではイメージするしかないアルプスの美しい自然の風景も、本作ではたっぷり味わえる。原作は児童文学だが、子どもだけでなく、いや大人こそ見てほしい作品に仕上がった。
『ハイジ アルプスの物語』
8月26日、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー!
監督:アラン・グスポーナー
出演:アヌーク・シュテフェン、ブルーノ・ガンツ、イザベル・オットマン
配給:キノフィルムズ
©2015 Zodiac Pictures Ltd / Claussen+Putz Filmproduktion GmbH / Studiocanal Film GmbH
公式サイト:http://heidimovie.jp/