9月9日公開『ナインイレヴン 運命を分けた日』マルティン・ギギ監督インタビュー

9.11 をビル内部の視点から描いた衝撃の感動作
『ナインイレヴン 運命を分けた日』
マルティン・ギギ監督インタビュー

NYワールドトレードセンタービルで起きた米同時多発テロ事件から16年。ビル内部の視点から描いた『ナインイレヴン 運命を分けた日』が9月9日(土)より新宿武蔵野館、丸の内TOEI他全国公開される。

『ナインイレヴン 運命を分けた日』 

© 2017 Nine Eleven Movie, LLC

本作は歴史の分岐点でもある大事件を題材にしながらも、パーソナルな物語にフォーカスすることで、現代の世界が抱えている問題―テロリズム、人種、移民、経済格差といったことから、家族の愛という人間の深部までを浮き彫りにしていく。
作品PRのために来日したマルティン・ギギ監督に、本作についてのお話をうかがった。

<STORY>
2001 年 9 月 11 日、ニューヨーク。ワールドトレードセンタービルのエレベーターに偶然居合わせた実業家のジェフリー(チャーリー・シーン)と離婚調停中の妻イヴ(ジーナ・ ガーション)、バイクメッセンジャーのマイケル(ウッド・ハリス)、恋人に別れを告げに来たティナ(オルガ・フォンダ)、ビルの保全技術者のエディ(ルイス・ガスマン)の5人。突如、ビルに飛行機が激突し彼らは北棟の 38 階辺りに閉じ込められてしまう。外部との唯一の通信手段はオペレーターのメッツィー(ウーピー・ゴールドバーグ)だけ。恐怖と闘いながら外への逃げ道を探す5人が極限状態で下した決断とは・・・。

―本作はNYワールドトレードセンタービルで起きた米同時多発テロ事件実話を題材にしています。16年がたった今、この事件についての映画を作ろうと思ったきっかけを教えてください
忘れてはならない事件ですが、時間の経過とともに風化しつつあるのを感じていました。この事件を体感した世代だけでなくこれからの新しい世代も含めて、もう一度、この事件について思い出して、考えるべきではないかと思って取り組みました。

―事件はどこで、どのように知りましたか。
その日はLAにいました。NYとは時差があり、まだ寝ていたのですが、友人から「私は大丈夫。ビルからちゃんと外に出たから」と電話があったのです。何のことかわからず、テレビをつけたところ、ビルに飛行機が激突した状況が映し出されました。驚きました。そのままずっとテレビに張り付いて一部始終を見ていましたが、幼い頃、NYで育ったこともあり、自分としてもかなりショックでした。

―ご友人は事件当時、ワールドトレードセンターにいたということですね。
彼女はキャリアウーマンで、勤務先がワールドトレードセンターだったのです。一機目が突っ込んで来たときはビルの中で、瞬時に「これは逃げないと大変」と判断して、うまく逃げたようです。

『ナインイレヴン 運命を分けた日』

© 2017 Nine Eleven Movie, LLC

―監督は映画だけでなく、ピアニスト、作曲家など音楽方面でもご活躍されています。映画ではなく、ライブを開く、曲を作るなど音楽で表現することはお考えになりませんでしたか
映画は総合芸術。映像、芝居、照明、音楽といったものを全部使って表現します。それを見る観客はさまざまな角度から非常に感動的な体験ができる。これは他の芸術にはできないことだと思います。

―生存者の方々に取材をしたとのことですが、辛い記憶を呼び起こしてもらうのは大変だったのではありませんか。
非常に辛かったです。インタビューしているとこちらも感情が揺さぶられます。一時期「作るべきではないんじゃないか」と思い留まりました。最終的には「僕は責任を負っている」という自覚が出てきて、それが映画を作る推進力になったのです。

『ナインイレヴン 運命を分けた日』 

© 2017 Nine Eleven Movie, LLC

―消防士の登場時間は短かったのですが、最後の「絶対に助けてやる」というセリフに、この事件にかかわったすべての消防士の尊い思いが凝縮されていたように感じます。
この映画を作った意義は、駆けつけた初動要員の消防士たち、救出に命を落としてしまった人たちに敬意を払うということです。

―消防士のセリフに泣いてしまいました。
私もあのセリフを聞くと涙が流れますね。実はあのセリフはアドリブでした。米同時多発テロ事件のときではありませんが、実際に消防活動を経験したことがある俳優が演じていたのです。ほかにも消防活動経験者は大勢いました。

―日本では消防士は男の子が憧れる職業です。
アメリカでも警察官、消防士、宇宙飛行士は人気ですね。

『ナインイレヴン 運命を分けた日』 

© 2017 Nine Eleven Movie, LLC

―ラストの表現方法に驚きました。ジェフリーを演じたチャーリー・シーンの顔が忘れられません。
最後のシーンはチャーリーの提案です。セリフはもう少しあったのですが、ジェフリーと消防士の視線で表現したかったので、最終的にはセリフを削ることにしました。また、最後を暗転にしたのは編集段階でした。編集を担当したエリック・ポッターの提案です。最後が効果的なのは見ているみなさんがあの日をじかに経験し、その共通認識があるからだと思います。
映画で描いているのは、映画の中だけの現実ではありません。我々が実際に経験したことです。時間が経過した今、改めて自分の日常と照らし合わせながら考える。人ごとではなく自分のこととして受け止めてもらう。実際に経験したということを反芻してもらう。そういう映画にしたかった。最後のシーンは僕自身、何回も編集室で見ましたが、今でも泣くんですよね。見ていて辛いシーンです。

―原題は『9/11』ですが、邦画には『運命を分けた日』とサブタイトルがついています。ラストを見たときに、このサブタイトルが胸に響きました。監督は邦題をどう感じていらっしゃいますか。
伝えたいことをうまく伝えていますね。正確だと思います。ほかの方からこういったクリエイティブな意見をいただくのは大歓迎です。これもコラボレーションだと思っています。

『ナインイレヴン 運命を分けた日』 

© 2017 Nine Eleven Movie, LLC

―エレベーターに閉じ込められた人の構成と運命について、性別、人種、世代、職業、経済格差などのバランスをかなり考えた上で設定されたのを感じました。
元々の戯曲にそういう要素は含まれていましたが、映画化するにあたり脚色しています。もう少し多様性のあるキャストにしました。人種、世代、経済格差などは意図的に設定しました。いろいろな立場の人を入れることで、それぞれの視点、物の見方がにじみ出てくる。それによってよりドラマチックな衝突や軋轢が生じたと思います。
ラストについては、基になった戯曲では全員が逃げられなかったとなっています。映画の脚本も第一稿では全員が犠牲になってしまうことになっていましたが、これもチャーリーの提案で変更しました。襲撃されたツインタワーは資本主義の象徴。登場人物の運命も同じように象徴的に描いています。

―ジェフリーが妻と離婚を巡ってケンカを始めたとき、ルイス・ガスマンが演じるビルの保全技術者エディが「夫婦喧嘩が一カ国でできていいね」というなど、緊迫感の中にも笑いがありました。
ルイス・ガスマンとは25年来の付き合いで、いつか一緒に仕事をしようと言っていたのですが、ようやくそういう機会がやってきました。彼はかなりアドリブを入れています。50%くらいはアドリブですね。私はそういうことが大歓迎です。彼だけでなく、ウッド・ハリスもアドリブを入れていました。

―ご自身の今後の野望をお聞かせください。
今後の活動としては、本を2冊書いていて、1冊は今年中に出版します。「リズム・オブ・プラネット」というタイトルで、哲学や人生に関するアドバイスを書いたものです。2冊目は「ここだけの話」というタイトルでありながら出版するのですが、エンターテインメント業界で経験したあれこれを書こうと思います。
野望としては、私はバスケットボールが大好きなので、いつかどこかのチームをコーチィングして、チャンピョンシップまで引き上げたいと思っています。

マルティン・ギギ監督

マルティン・ギギ 監督

 

 

 

 

 

 

 

 

 


<プロフィール>
1965 年アルゼンチン、ブエノスアイレス生まれ。
「The Bronx Bull(原題)」「アイ・ソウ・ザ・デビル ~目撃者~」を含む 9 つの長編映画と数本のドキュメンタリー映画を監督し、16 本の脚本や十数本の製作総指揮、20本を超える映画やテレビ音楽、大規模ツアーを廻りながら 30 枚の音楽アルバムを手掛ける。
グラミー賞の投票メンバーでもあり、ビルボード賞、 ASCAP(米国作曲家作詞家出版者協会)パフォーマンス賞、セザール賞、ゴールデンスピリット賞、コンキスタドール賞、エスタブルック賞等で数々の作曲賞を受賞。多くの音楽祭では監督賞を受賞、更に、ロサンゼルス市より2度も音楽教育における芸術貢献で表彰された。

『ナインイレヴン 運命を分けた日』
9月9日(土)、新宿武蔵野館、丸の内TOEI他全国ロードショー
監督:マルティン・ギギ
製作総指揮:マーク・バーグ
製作:ウォーレン・オスターガード
出演:チャーリー・シーン(『プラトーン』)、ウーピー・ゴールドバーグ(『天使にラブ・ソングを…』)、ジーナ・ガーション(『フェイス/オフ』) ルイス・ガスマン、ウッド・ハリス、オルガ・フォンダ、ジャクリーン・ビセット、ブルース・デイヴィソン
原題:9/11/2017 年/アメリカ/英語/90 分/シネスコ/カラー/字幕翻訳:種市譲二
配給:シンカ
協力:松竹
© 2017 Nine Eleven Movie, LLC
公式サイト: http://nineeleven.jp/

<取材・文:堀木三紀>

2017-09-04 | Posted in NEWSComments Closed