YABOサタデー映画館―2017.9.16
『YABO』の由来は野望。
野望という強い意志を持って前向きに生きる人を取材し、その人の魅力や情報を発信するフリーペーパーです。
WEB版では毎週土曜日に「YABOサタデー映画館」を掲載。
作品をあらすじとともに野望や希望、理想にあふれる人物をYABO人としてピックアップします。
今週は下記の5作品をご紹介します。
『アフターマス』
『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』
『望郷』
『汚れたダイヤモンド』
『笑う故郷』
『アフターマス』
本作のタイトルになっている『アフターマス』(AFTERMATH)とは、災害・大事件・大事故で引き起こされるその状況を表す言葉であり、余波、結果、後遺症、痛手などを示す。
YABO人:ローマン(アーノルド・シュワルツネッガー)
妻ナディヤと身重の娘オレーナが数か月ぶりにオハイオ州コロンバスの自宅に帰ってくるのを心待ちにしていた。待ちきれずに空港へ花束を持って迎えにいくと、妻と娘が乗っているはずの便が到着する様子はなく、別室に案内される。そこで、家族が乗った飛行機が空中で衝突事故を起こしたと空港の管理会社から聞かされる。飛行機の残骸が残る生存者なしの悲惨な事故現場を訪れ、娘の遺体を抱きかかえて、声にならない悲しみに暮れる。航空会社に対して謝罪を求めるが、彼らは表面的な補償のみの心無い対応をするだけ。憤りを感じて、事故の責任がどこにあるのかを突き止めようとする。やがて事故には一人の航空管制官ジェイコブ(スクート・マクネイリー)が関わっていることを知り、「謝罪をしてもらいたい」という一心で彼の居所を探し始める。YABO人:航空管制官ジェイコブ(スクート・マクネイリー)
妻と息子の3人で幸せに暮らしていたが、管制塔での無理なワンオペ体制での業務によって、2つの飛行機の異常接近を見落としてしまう。事故後、精神的に追い詰められ、会社から名前や職、住まいを変えることを提案される。妻とは離婚してはいないものの、離れて暮らすようになった。
アーノルド・シュワルツェネッガーが妻と娘を亡くした主人公を演じると聞くと、「怒らせてはいけない男を怒らせてしまった」といったストーリー展開とマシンガンを背負ってバイクにまたがる姿を想像しがちだが、今回は違う。15年前の2002年7月にドイツ南部の上空で実際に起こった<ユーバーリンゲン空中衝突事故>とその後に発生した事件を基にしたヒューマンドラマに挑戦。飛行機の衝突事故で妻と身重の娘を失くした悲しみに耐え、その真相を追う男を演じる。
シュワルツェネッガーが演じるローマンは謝ってほしかっただけなのだが、誰一人、彼に謝るものはいなかった。それが2つめの悲劇を生む。航空管制官のジェイコブにとっても謝る機会があったならば、精神的に追い詰められることはなかったかもしれない。
『アフターマス』
9月16日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
監督: エリオット・レスター
出演: アーノルド・シュワルツェネッガー、スクート・マクネイリー、マギー・グレイス、グレン・モーシャワー 、マーティン・ドノヴァン
配給: ファインフィルムズ
© 2016 GEORGIA FILM FUND 43, LLC
公式サイト: http://www.finefilms.co.jp/aftermath/
『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』
YABO人:コーロキ(妻夫木聡)
“力まないカッコいい大人”=奥田民生、に憧れる雑誌編集者。おしゃれライフスタイル雑誌編集部に異動になり、慣れない高度な会話に四苦八苦しながらも、次第におしゃれピープルに馴染み、奥田民生みたいな編集者になると決意する。そんな時、仕事で出会ったファッションプレスの美女天海あかり(水原希子)にひとめぼれ。あかりに釣り合う男になろうと仕事に力を入れ、デートすることになるが、あかりの自由奔放な言動に振り回され、いつしか身も心もズタボロになっていく。
男を狂わす美女に一目ぼれした雑誌編集者が、恋の喜びや絶望を味わい、もがき苦しむ抱腹絶倒のラブコメディ。人気コラムニスト・渋谷直角のレジェンドコミックを、「モテキ」の大根仁監督が映画化した。主人公コーロキ役には、「僕はそもそも奥田民生になりたいボーイなんです」とファンを公言する妻夫木聡。映画化を熱望し、うだつが上がらない編集者をコミカルに演じる。
超絶美人なファッションプレスのあかり役には、ファッションアイコンとして絶大な支持を得るトップモデルで、話題の映画やドラマにも立て続けに出演する人気女優、水原希子。最強(最恐!最狂!)にキュートでセクシーに、観る者すべてを狂わせる。
『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』
2017年9月16日(土)全国東宝系にてロードショー
監督・脚本:大根仁
出演: 妻夫木聡 水原希子
新井浩文 安藤サクラ 江口のりこ 天海祐希 リリー・フランキー 松尾スズキ
配給: 東宝
©2017「民生ボーイと狂わせガール」製作委員会
公式サイト:http://tamioboy-kuruwasegirl.jp/
『望郷』
ミステリー作家として有名な湊かなえが第65回日本推理作家協会賞を受賞した「望郷」の映画化。原作は6編が収録された短編集だが、その中から「夢の国」「光の航路」を取り上げ、「夢の国」パートの主人公・夢都子を貫地谷しほり、「光の航路」パートの主人公・航を大東駿介が演じ、ある島で暮らす2組の親子の過去と未来の物語を描く。
YABO人:夢都子(貫地谷しほり)
周りから「お屋敷」と呼ばれる、古いしきたりを重んじる家庭に育ち、家に縛られた生活を祖母から強いられていた。本土にある“ドリームランド”が決して叶わない自由の象徴。月日は流れ、結婚をして幸せな家庭を築く中、夫から今年で閉園が決まったドリームランドへ行こうと誘われる。YABO人:航(大東駿介)
9年ぶりに本土から故郷の白綱島に戻り、夢都子の夫と同じ学校に着任。クラス内で起こっているいじめ問題を解決しようと奔走するが、いじめを受けている少女が自殺未遂を起こしてしまう。そんなある日、亡き父(緒形直人)のお墓参りで、父の教え子と名乗る畑野と出会う。畑野は父の教師としての姿を語り出し、父のことを誤解していたと知る。
重石のように家族に押さえつけていた祖母が亡くなった途端に母が祖母化していく。そんな自分の変化に母は気づいていない。そして夢都子もかつての母が自分に接したように、娘に接している。家の呪縛はこのまま連鎖していくのか。夢都子はそれを断ち切るかのように母と向き合う。ラストの描き方は映画オリジナルとなっている。
『望郷』
2017年9月16日(土)新宿武蔵野館ほか 全国拡大上映
原作:湊かなえ「夢の国」「光の航路」(『望郷』文春文庫 所収)
監督:菊地健雄
出演:貫地谷しほり、大東駿介 、木村多江、緒形直人ほか
制作・配給:エイベックス・デジタル
©2017 avex digital Inc.
公式サイト: http://bokyo.jp/
『汚れたダイヤモンド』
YABO人:ピエール(ニールス・シュネデール)
眼と記憶力の良さを生かして、強盗団の下見役をして生計を立てていたところ、15年前から消息不明だった父親の死を知る。父はベルギー・アントワープのダイヤモンド商家の家に生まれ、眼の良さと手先の器用さからダイヤモンド研磨を継いでいた。ところが、疲れによる不注意から研磨機に指を挟み、指先を失ってしまう。それをきっかけに精神を病み、伯父(ハンス・ペーター・クロース)によって一族から追い出された。父の葬儀で伯父や従兄(アウグスト・ディール)と会い、彼らがダイヤモンド会社を継ぎ、財を成していることを知り、伯父一族への復讐を誓う。そんなとき、従兄から仕事を頼まれ、パリからアントワープへ移る。そこで生まれて初めてダイヤモンドに触れ、自分の体内に流れる、父から受け継いだ血が騒ぎだすのを感じるのだった。
ピエールは強盗団で参謀役を務めるラシッド(アブデル・アフェド・ベノトマン)と金庫破りが専門のケビン(ギョーム・ヴェルディエ)にダイヤモンドの強奪計画を持ち掛け、伯父への復讐を図ろうとした。しかし、伯父の家に潜入しているうちに、伯父や従兄親しみを覚えるようになる。果たしてピエールの復讐は成就されるのか。クライマックスは予想外な展開となり、ピエールに対してある深いモラルの決断を強いるが、父や父親代わりの存在(ラシッドや伯父)からの呪縛を解き放つ。
アルチュール・アラリ監督は、本作でフランス映画批評家協会・新人監督賞、リュミエール学院が主宰するジャック・ドレー(推理映画)賞、ボーヌ国際探偵映画祭・審査員賞およびクロード・シャブロル賞を受賞。ピエールを演じた主演のニールス・シュネデールはセザール賞・有望若手男優賞(新人男優賞)を受賞した。
『汚れたダイヤモンド』
9月16日(土)より、ユーロスペースほかにて公開(全国順次)
監督:アルチュール・アラリ
出演:ニールス・シュネデール、アウグスト・ディール、ハンス・ペーター・クロース、アブデル・アフェド・ベノトマン、ラファエル・ゴダン
配給:エタンチェ
© LFP‐Les Films Pelléas / Savage Film / Frakas Productions / France 2 cinéma / Jouror Productions
公式サイト: https://www.diamantnoir-jp.com/
『笑う故郷』
YABO人:アルゼンチン出身のノーベル賞作家ダニエル・マントバーニ (オスカル・マルティネス)
ノーベル賞受賞以来5年が経つが、その間に作品を1冊も発表できないまま、スペインの豪邸で隠遁生活を送っていた。そこに故郷の田舎町サラスから「名誉市民」の称号を贈りたいとの知らせが届く。20代のころに逃げるように故郷を出て以来、一度も帰省していなかったが、40年ぶりに帰郷。名誉市民の授与式には大勢の住民が集まり、温かく迎えられる。その後の講演会では幼なじみのアントニオ(ダディ・ブリエバ)と再会。ダニエルが故郷に置いてきた恋人イレーネ(アンドレア・フリヘリオ)とアントニオが結婚していたことを知る。その後、知らない男性からは「小説に出てくるのは自分の父だ」と主張され、ホテルに帰れば、体の不自由な子どもへの寄付を求める親が待っていて、部屋には若い美女が押しかけてくる。審査員を頼まれた絵画コンクールでは地元の美術協会の代表に脅される。久しぶりの帰郷を楽しんでいたのもつかの間、次第に居心地が悪くなっていった。
作家は故郷が嫌で飛び出し、その故郷を嘲笑する小説を書いて有名になる。故郷の田舎町は書かれたことで世間に知られるようになった。初めこそ、町の人々は作家を英雄として歓待していたが、次第に互いの本音が露呈。親しみの感情が憎悪に代わる。そんな人間模様を辛辣に描き、衝撃的なクライマックスを迎えるが、作家はそれさえも利用してしまう。書くことを生業にしている者の性を見た気がする。
『笑う故郷』
9/16(土)岩波ホールにてロードショー 以下全国順次公開
監督・撮影:マリアノ・コーン、ガストン・ドゥプラット
出演: オスカル・マルティネス、ダディ・ブリエバ、アンドレア・フリヘリオ
配給: パンドラ
公式サイト: http://www.waraukokyo.com/