加藤諒さんインタビュー!「『パタリロ!』は僕にとって運命的な作品です」
圧倒的な存在感と柔軟な演技力で異彩を放つ俳優・加藤諒さんが、6月28日(金)より劇場公開される実写映画・劇場版「パタリロ!」で初の単独主演を務める。『パタリロ!』は、1978年から40年以上連載が続く、魔夜峰央原作のコミック。マリネラ王国国王のパタリロ・ド・マリネール8世が、周囲を巻き込んで起こす騒動を描く。「実写化は不可能」と言われていたが、2016年12月には舞台「パタリロ!」が、2018年3月には舞台「パタリロ!」★スターダスト計画★が上演され、加藤諒さんが演じるパタリロ殿下が「ハマりすぎ!」と大反響を呼んだ。舞台版に続き、本作で主演を務める加藤諒さんに『パタリロ!』に込めた想いを直撃インタビュー!
―劇場版ならではの工夫や、「映画だからこうしよう」と意識されたことはありますか?
加藤諒(以下、「加藤」) 僕は「映画だから」というのは一切意識していないです。顕作さん(小林顕作監督)も「意識していない」とおっしゃっていましたし、初演の舞台をそのまま映画化しているので、それを崩すつもりはまったくなくて。舞台に寄せたセットを倉庫に建てて撮ったり、みんなで築きあげたものを出すという感じでした。『パタリロ!』の世界観もそうですが、魔夜先生の世界観は、ナチュラルに演じない方が絶対に面白いと思っています。「映画っぽく」とか「ナチュラルに」というよりも、僕はちょっとオーバーな感じでやった方が魔夜先生の世界に合うと思って演じていました。
―魔夜先生原作の映画『翔んで埼玉』(18)にもご出演され、加藤さんは独特の存在感を放っています。
加藤 『翔んで埼玉』の撮影の時は、武内監督から「大河ドラマを撮っているつもりでやってほしい」と言われました。『パタリロ!』の舞台の初演時は、顕作さんが『真田丸』を撮り終わった後で、僕も『真田丸』に出演させていただいたこともあって、第一声から「大河ドラマ風だ!」とおっしゃっていたんです。ちょっと古風な、ちょっとオーバーな、そうした迫力を意識はしていますが、「映画だから繊細なお芝居をしよう」というのはあまりなかったです。でも、玄くん(青木玄徳:ジャック・バンコラン役)は絶対に意識してると思います! だって舞台と違うもん。もっと強烈だったじゃん!って(笑)。
―舞台よりも控えめなバンコランだったのですか?
加藤 そうです! セリフの言い方も抑えてる感じがして。逆にそれが面白かったんですけど(笑)。「絶対、意識してるやん!」って思いながら演じていました。
―歌とキレのあるダンス、倒錯した純愛、昭和のギャグが盛り沢山で面白くて、見ていて楽しかったです。キャスト同士で演技プランを練ったり、工夫したことはありますか?
加藤 ありがとうございます! 正直、僕はそんな余裕がなくて。『パタリロ!』はセリフ量も多いですし、顕作さんはその場その場で演出される方なので、自分がこうしようとか他のキャストさんと話し合ってこうしようと考えるよりも、その場で顕作さんと作っていく感じでした。タマネギ部隊は、メンバー同士でよく話していましたね。そういう意識が高かったのは、タマネギ部隊なのかなと思います。
―タマネギ部隊のドタバタ劇や妖艶なシーン、そしてマヤメンズのアクションシーンも見どころですね。
加藤 アクションシーンの撮影中に、銀平さん(佐藤銀平:マヤメンズ役)が玄くんにめっちゃ怒られていたんです。玄くんはアクションもこだわりが強くて、「こうしたら、こう! もっと切り返しを早くしないと!」って。それを言われた銀平さんが「なんで俺ばっかりに言うんだよ」ってちょっとしょんぼりしていて(笑)。そういうのは『パタリロ!』の現場ではよくあることなんです。陽永くん(三上陽永:マヤメンズ役)と銀平さんがケンカして、それを顕作さんがイジり始めたりとか(笑)。結局、陽永くんと銀平さんはものすごく仲が良いんですけど、それはもう『パタリロ!』風物詩で、そのケンカを見ると、「あー『パタリロ!』の現場に戻ってきたな」って安心します。
―みなさんのリアルなドタバタ劇が目に浮かびます(笑)。
加藤 タマネギ部隊は顕作さんから試されているというか、タマネギ部隊が「ちょっとここで面白いことやろうよ」みたいな感じで何かすると、顕作さんはいつも「全然、面白くない」っていう顔をするんです。とくに恒生くん(吉本恒生:タマネギ17号役)に対して厳しくて(笑)。それも『パタリロ!』の現場でよく見る光景だから、そういうのもすごくいいなって。
恒生くんは『パタリロ!』が初舞台だったんです。顕作さんは愛のある方なので、ここから一皮むけて欲しいという気持ちもあって、すごく愛情を注いでいたんじゃないかなと僕は思っています。たぶん顕作さんに言ったら、「えー、俺、全然注いでねぇし!」って言うと思いますけど(笑)。
◆『パタリロ!』ならではの昭和の笑いの美学
―劇中でパタリロがさまざまなキャラクターに扮しているのも見どころです。どのコスチュームが印象に残っていますか?
加藤 衣装合わせにあんなに時間がかかったのは『パタリロ!』くらいですよ! 本当にいろんなコスチュームを着させていただきました。そのなかでも、月影先生を演じさせていただいたのは、嬉しくて感動しました! 舞台版では、月影先生の絵を描いた板が登場して、カタカタ揺れている絵との会話だったんです。映画版では、全部、僕でやらせてもらえたので嬉しかったです。原作でもパタリロはいろんなコスプレをしたりマライヒになったりもしているんです。それを映画で表現できたので面白かったです。
―コスプレシーンでは、昭和を代表するテレビドラマの数々を思い出しました(笑)。
加藤 昭和ネタをいっぱい盛り込んでいるんですけど、令和になっても昭和をやるっていう(笑)。そういうところが面白いと思います。
―『パタリロ!』ならではですね。
加藤 『パタリロ!』の世界観って、僕はオシャレだと思うんです。昭和の笑いには、昭和のノリや“笑いの美学”があると思います。それが美しいなと。僕も昭和のレトロな感じが好きなので、平成、令和の方々にも受け入れてもらえたら嬉しいです。
◆世代を超えて愛され続ける『パタリロ!』
―『パタリロ!』を親子二代、三代で楽しんでくださっている方もいらっしゃるそうで。
加藤 舞台の終演後のアンケートで、娘さんが役者のファンでお母さんもパタリロが好きだから、「親子で一緒に見に来ました!」と書いてくださった方がいたり、69歳の方が見に来てくださっていたり、幅広く愛されているんだなと思いました。少女マンガだから女性が多いのかなと思ったのですが、おじさまが多かったのは意外でした。
―男性も多かったのですね!
加藤 上演後にカーテンコールで僕がお話をさせていただくんですけど、野太い声で「クックロビン音頭!」って聞こえてきて (笑)。「じゃあ、みんなで踊りましょうか」って(笑)。舞台の続編で、「マライヒとバンコランのキスシーンがないから欲しい」という熱い想いをアンケートに書いてくださったのが、おじさまだったりもして。少女マンガだからっていうのは偏見で、おじさまもご覧になるんだなって。僕も少女マンガを読みますし、白泉社さんの『フルーツバスケット』も好きです。
―『パタリロ!』は世代を超えて男女問わずたくさんの方に愛されているのですね。映画も多くの方にご覧いただきたいですね。
加藤 僕はお客様の反応がすごく気になっていて、年上の方の感想も知りたいですし、高校生が見たらどう思うのか気になっています。顕作さんは、今回が初長編の映画監督作品です。舞台はお客様の反応が返ってくるから、なんとなく「こうしていったらいい」というのが分かるのですが、映画はお客様に見てもらわないと分からないから、すごく不安だとおっしゃっていました。
―ぜひ映画をご覧になった感想をSNSで発信したり、周りの方々にすすめたりしていただけたら嬉しいですね。これから劇場版「パタリロ!」をご覧になる皆様へメッセージをお願いします。
加藤 僕はこの作品が初の単独主演映画です。舞台で初主演させていただいたのも『パタリロ!』で、映画で初単独主演させていただいたのも『パタリロ!』なんです。『パタリロ!』は、僕にとって運命的な作品です。出演者に西岡德馬さん、哀川翔さん、鈴木砂羽さんなど、すごい方々が出演しているのに、ポスターには出演者の名前が僕しか書いてないとか、もう「ホント、ごめんなさい!」って感じなんですけど…。
『パタリロ!』を初めてご覧になる方には『パタリロ!』の世界観を感じていただけたり、マンガやアニメでご覧になっていた方には懐かしく思っていただけたり、平成に育ってきた世代の方々には「昭和ってこうだったんだな」って思っていただけたり、いろいろな方々が楽しめる作品になっていると思います。ただ、普通の映画だと思って見に来ないでください(笑)。
◆眉毛はそのままで。自分にしかできない、“自分らしさ”を貫く
―加藤さんは、舞台、映画、ドラマなどでさまざまな役を演じられています。役者として大切にしていることを教えてください。
加藤 「自分らしさ」というのはいつも意識しています。僕はマンガ原作を演じることが多いのですが、マンガやアニメの通りなど、原作に忠実にやられる方も多いんです。声もアニメの声優さんに寄せたりする方を現場で目撃してしまうと、「代わりが誰でもいるじゃん」って思ってしまうんです。ちょっと欲張りな考えですが、せっかくこの時にこの作品で僕を選んでくださったのなら、やっぱり自分にしかできないその役をやりたい。実は、パタリロを演じるにあたり、眉毛問題があったんです。
―眉毛問題というのは⁈
加藤 原作のパタリロは眉毛が細いんです。だから、眉毛を金髪に染めるとか剃るとか、色々意見がありましたが、最終的に「加藤諒が演じるんだから、眉毛が太くていいじゃない」という意見をいただいて。それで、眉毛はそのままでというのが、『パタリロ!』での僕らしさかなと。他の人がやったらどうなるのかなというのもありますし、原作ファンの方々には「原作と違う」と思われるかもしれないけど、「僕が演じるパタリロはこうです」というのをすごく意識して演じています。
―「自分らしさ」を大切にされているのですね。最後に、加藤さんの野望を教えてください!
加藤 役者って、少し受け身な仕事だなと思っていたところがあったのですが、これからは自発的に「こういう役をやりたい!」と言っていけたらいいなと思っています。待つだけじゃなくて、プロデューサーさんや監督さんに、「面白いのでこのマンガを舞台化してみたらどうですか?」とか、「この小説すごく面白いので、映画化してみたらどうですか? この役は、加藤諒に合うと思うんですけど」って(笑)。
―積極的ですね。今までは受け身でしたか?
加藤 仕事がない時期は攻めにいってましたね。ワークショップに行って、監督さんに「もしかしたら、見た目がこういう感じだから使いづらいかもしれないですけど、小さな役でもやるので、もし良かったら呼んでください!」と直接お願いしに行っていました。
―自分から行動する努力の積み重ねが、今のご活躍につながっているのですね。
加藤 二階堂ふみさんの『リバース・エッジ』や斎藤工さんの『麻雀放浪記』など、俳優さんが企画に携わった映画が公開されているのを見ると、そういう時代になってきているのかなと思うんです。これからは僕も自発的に携わっていけたらいいなと思うようになりました。
―マンガ原作、アニメ原作の実写化ブームですからね。そこでアプローチできると強みになりますね。
加藤 最近、周囲の方々にも、「やりたい原作はありますか?」と聞かれるようになったんです。アニメも好きですし、マンガも好きでよく読んでいるので、今まで以上にアンテナを張っていきたいですね。あと、原作作品も大事ですが、オリジナル作品を作っている方との出会いも大切にしていきたいです。原作作品もオリジナル作品も勝負できる時代がきたらいいなと思っています。
―加藤さんご自身は、物語や脚本を書くことに興味はありますか?
加藤 多摩美術大学時代に、課題で自伝的な小説を書いたことはありますが、白紙に黒い点を打つという行為の大変さをずっと実感していたので…。でも、最近、自発的に作品を作る機会をいただいて挑戦させていただいたのですが、白に黒い点を打つ作業が大事だなと思ったので、今後はそういうこともできるようになったらいいなと思います。
<PLOFILE>
加藤諒(かとう りょう)
1990年2月13日、静岡県出身。10歳で「あっぱれさんま大先生」(CX)に出演し、芸能界デビュー。以降、個性派俳優として映画、ドラマ、舞台、CM、バラエティなどで幅広く活躍を続けている。近年の主な映画出演作品には、『火花』(17)、『ギャングース』(18)、『ニセコイ』(18)、『翔んで埼玉』(19)、『PRINCE OF LEGEND』(19)等がある。TVドラマでは「アシガール」(NHK)、「僕たちがやりました」(KTV)、「真田丸」(NHK)、「ゆとりですがなにか」(NTV)、「主に泣いてます」(CX)等に出演。舞台への出演も数多く、舞台「パタリロ!」と舞台「パタリロ!」★スターダスト計画★では主演を務めたほか、「人間風車」、残酷歌劇「ライチ☆光クラブ」等に出演。ドラマ『ルパンの娘』が7月11日(木)から放送される。
ヘアメイク:堀川貴世
スタイリスト:東 正晃
撮影・インタビュー・文:出澤由美子
劇場版「パタリロ!」は、6月28日(金)よりTOHOシネマズ 新宿ほか全国順次ロードショー!
劇場版「パタリロ!」
原作:魔夜峰央「パタリロ!」(白泉社刊)
監督:小林顕作
脚本:池田テツヒロ
出演:加藤諒/青木玄徳 佐奈宏紀/細貝圭 金井成大 石田隼 吉本恒生 三津谷亮 小林亮太/
松村雄基 近江谷太朗 木下ほうか 池田鉄洋/須賀健太 鈴木砂羽/魔夜峰央/西岡德馬/
哀川翔 ほか
配給:HIGH BROW CINEMA
公式サイト https://patalliro-themovie.jp