9月30日公開『AMY SAID エイミー・セッド』村本大志監督インタビュー

大人の青春映画『AMY SAID エイミー・セッド』が9月30日(土)に東京・テアトル新宿ほかにて公開される。村上淳、渋川清彦、村上虹郎といった日本映画に数多く出演する俳優のマネージメント集団ディケイドが設立25周年を記念して製作したもので、大学時代に映画研究会に所属していた40代の男女8人が20年ぶりに再会した一夜を描く。三浦誠己が主演を務め、ディケイドの所属俳優がキャストに名を連ねる。メガホンを執ったのは村本大志監督。長編デビュー作『MASK DE 41』(田口トモロヲ主演、2004)が釜山国際映画祭で企画賞グランプリを獲得するなど、国内外から注目される個性派監督だ。その村本監督に作品に対する思いをうかがった。

―監督をお引き受けになったきっかけを教えてください。
ディケイドの社長である佐伯真吾さんとは17〜8年、懇意にしています。いつか一緒に映画を作りたいですねと話していましたが、なかなかタイミングが合わず、ディケイド25周年のタイミングでやっと実現しました。

―脚本に監督と狗飼恭子さんのお名前があります。ストーリーはお2人で相談して作っていったのでしょうか。
着想は佐伯さんで、それを基に佐伯さんと僕で考えました。
ディケイドの25周年記念ですから、所属する役者さんをみなさん出演させたいということで、最初に佐伯さんから「全員、同級生で何かできませんか」と話がありました。そこで、同級生が一堂に集まって、一晩過ごすという話を提案したのです。ただ、みんなに見せ場があって、バランスよく物語を進めるのはすごく大変。しかも、若い子も出したいということだったので、現在だけでは難しい。それで20年ぶりの同窓会にして、過去のシーンも入れることになり、僕の学生時代の思い出をベースに、まずは僕が脚本を書いたのです。

『AMY SAID エイミー・セッド』

©2017「AMY SAID」製作委員会

―監督も学生時代は映画研究会に入っていたのでしょうか。
僕は日大芸術学部映画学科出身で、サークルではありません。夢を追って大学に入ったけれど、実現しなかった人がいちばん多い大学ですね。僕もその一人です(笑)。しかし、それでは一般性がない。成城大学や成蹊大学といった、ちょっと郊外にある大学の映画研究会をイメージしました。成蹊大学は手塚眞さん、成城大学は大林宣彦さんが有名ですが、70〜80年代の自主制作の方は意外とそういった大学出身の人が多かった気がします。今でも映画研究会はあると思いますが、8ミリで撮っていたころの映画研究会をイメージして書きました。

―今回は監督がメインで脚本を書かれたのでしょうか。
普通は脚本家が書いた脚本を監督がリライトすることが多い気がしますが、今回は僕が五稿まで書いて、六稿~八稿を狗飼さんが書きました。それを稽古で微調整して決定稿にしたのです。

―タイトルが『AFTER-PARTY』から『AMY SAID エイミー・セッド』に変わりました。
僕が最初に二次会という意味で、『AFTER-PARTY』とタイトルをつけました。「どこかでパーティがあり、二次会で流れてきた」という設定だったのです。登場人物は40代。若い時を意味する人生の一次会が終わり、これから二次会が始まる年代という意味合いもありました。
しかし、英語のタイトルは検索してもらい辛い。かといって、『AFTER-PARTY』をカタカナにするとカラオケみたいな感じでカッコ悪い。すると佐伯さんが、「大橋トリオさんが書き下ろした主題歌のタイトル『AMY SAID』は映画の内容ともリンクしていていいのでは」と提案されたのです。曲名と映画のタイトルが一緒というのは、ディケイドらしくていいんじゃないかと僕も思ったので賛成しました。編集が出来上がってからのことです。

『AMY SAID エイミー・セッド』大橋トリオ

©2017「AMY SAID」製作委員会

―会話が中心の作品です。アドリブは多かったのでしょうか。
アドリブはほとんどなかったですね。もし、アドリブが多く感じたのであれば、そういう風に見せている俳優の技術じゃないかな。僕はディケイドに対して、劇団のようなイメージを持っていましたが、いざ始めてみると全然違う。俳優は個人事業主。事務所が同じでも、全員で同じ作品に出ることは普通、ありません。顔見知りで芝居のトーンを知っているけれど、劇団のような運命共同体でもない。微妙な距離感ですね。ただ、みんなも俳優をやって20年くらいの人たちなので、自分と重ね合わせていた部分があるのかもしれない。大人の俳優として、お互いのキャリアに敬意を持って接していましたね。

―ディケイドの俳優はみなさん、個性が強いイメージがあります。
ディケイドはサッカーで例えるなら、強烈なフォワードがいないチーム。いわゆる分かりやすいスターはいない。それをどうするかが課題でした。そこで、今回は三浦くんがワントップのフォワードですが、「全員攻撃、全員守備で、誰がゴールを決めてもいい」として、みんなで映画を支えるとしたのです。
最初に「事前準備に時間をかけたい」と佐伯さんや俳優さんにお願いしました。演劇を作るように稽古を重ねて、練り上げたものを撮影現場で瞬発力でぱっと出す。撮影時間があまりなかったので、とにかく事前にできることは全部しておきたかったのです。いい大人が公民館のような公共施設の会議室を借りて、すごく稽古をしたんですよ。そのときにみんなで意見を出し合い、ほぼ決めた上で撮影現場に臨みました。もちろん現場でもある程度、変更はありましたが、普通の映画のやり方とは違いますね。

『AMY SAID エイミー・セッド』三浦誠己

©2017「AMY SAID」製作委員会

―一般的な映画の撮り方とは違うことで、俳優の方々が大変ではありませんでしたか。
大人8人はみんな楽しかったようです。こちらも撮っていて楽しかったですね。俳優がセリフを完全に入れてからさらに稽古を重ねて、あとはカメラの前でやるだけという状態で来ているから、10分、15分の長回しができるのです。しかも、役とセリフが入っているので、どこで切っても始められる。カット割りをしないで、ブロックを通して撮りました。役者とスタッフの気持ちが1つになって、流れるようにスムーズ。こんな撮り方をしたのは初めてですが、こういう風に撮るには事前に稽古が必要。俳優がそれに応えてくれたからこそできました。とても緊張感がありました。

―映画研究会の部室はあの頃の雰囲気そのものでした。
映画研究会の部室は予算が少ないにもかかわらず、美術の人たちがすごくいい飾り込みをしてくれたのです。現像所の空いているスペースにいろんなものを持ち込んで、映画研究会のセットを作ったのですが、入った瞬間、泣きそうになるくらい感動しました。

『AMY SAID エイミー・セッド』柿木アミナ

©2017「AMY SAID」製作委員会

―若い俳優さんたちとはどのように作り上げていきましたか。
若い人は大人たちとは別に稽古をしました。エミちゃんを演じた柿木アミナさんは、普段はモデルで演技は初めて。ほかにも映画初出演という人が何人もいたのです。みんな積極的に取り組んでいましたね。三浦くんの若いときを演じた白戸達也くんを中心に、役柄のまま30分くらいお茶を飲むなど、一見無駄に思える時間を過ごしていましたが、それがよかった。エミちゃんが屋上から飛び降りるシーンは1テイクしか撮っていませんが、いい顔しているなと思いましたね。

―監督はご自身でジーンズブランドを立ち上げています。作品でも衣装にこだわりがあったとうかがっています。
三浦くんがはいているGパンは2種類あるのですが、それが僕の作っているGパンです。普段、パン屋で着ているのは洗いざらしの色が落ちたワークシャツとGパンですが、同窓会に行くときはインディゴ・ワンウォッシュの濃いGパン。これは彼にとっては正装なんです。
若い子たちの衣装は僕のGパンを売ってくれているタイムズアーチェインジンという群馬県にあるショップのチーフマネージャーに相談して、本当に1996年当時のものを再現しました。セリフがほとんどない若い子の衣装は特にがんばって、本物のヴィンテージのデニムをはいてもらったり、当時より古いM-65を探してきて、『タクシードライバー』モデルにカスタムするなどこだわりました。

―現在パートでも、山本浩司さんが演じた岡本亮介はM-65を着ています。
僕はもともとM-65が好きで、映画で主人公たちがM-65を着ているとマニアのように見てしまいます。それでM-65が好きだったヤツを1人入れたくて、岡本亮介をそういう人物に設定しました。山本くんが演じた今の岡本はバズリクソンズというブランドのウィリアム・ギブソンモデルを着ています。これは現代的にアップデートされたM-65。過去の岡本はワッペンも『タクシードライバー』の劇中のものを再現しています。昔も今も好きだから着ている。それは彼が役者を続けていることにも繋がる。今の岡本のTシャツにボブ・ディランの顔がデザインされていますが、吹き出しで「20年前のことは気にしないでいこうよ」という意味の言葉が入ってます。タイムズアーチェインジンが作っているもので1枚、分けてもらいました。岡本は「今日がエミの20年目の命日だから」と黒のM-65に喪章をつけているけれど、20年前のことは気にしなくていいんじゃないのというTシャツを着ているのです。英語のセリフを言うシーンでM-65を脱ぎ捨てて初めて、ボブ・ディランの顔が見えるのですが、カメラが寄ってはいないので、メッセージは知っている人にしかわかりません。マニアックに楽しめる箇所をちょこちょこ入れています。

『AMY SAID エイミー・セッド』山本浩司、松浦祐也

©2017「AMY SAID」製作委員会

―ほかにも設定にこだわった人物はいますでしょうか。
テイ龍進くんが演じた木塚修司は、アメリカンニューシネマが好きという設定にしました。僕の卒論のテーマでもあります(笑)それで過去の木塚には、『ディア・ハンター』でロバート・デ・ニーロが鹿狩りに行く時に着ていたマウンテンパーカーと同じものを着せました。それは僕が復刻版を買って持っていた私物ですが、ブランドによっては消滅しているものもあるので、探すのはなかなか大変です。
こういったことが作品の中にたくさんあります。ファッション関係の人が見るとわかると思いますが、エミが着ているワンピースは35年くらい前のラルフローレンや、25年くらい前のアニエスbです。また、『台風クラブ』の工藤夕貴さんがすごく好きだったという設定になっているので、ヘアメイクの人が工藤夕貴さんのようなおさげにしてくれました。スタッフにも細やかな映画愛がある作品です。

『AMY SAID エイミー・セッド』テイ龍進

©2017「AMY SAID」製作委員会

―「相米慎二監督がみんな好きだった」というセリフがありましたが、それは監督の思いだけでなく、スタッフのみなさんの共有する思いだったのですね。
僕は相米監督の下で働いていたので、相米監督に特別な思いがあります。ただ、若いときにこの手の自主映画を作る人は相米映画が好きなことが多いですよね。そういう意味で、相米さんの名前をメタファーとして出させてもらって、相米さんの真似をみんなでしていたことにしました。

―今後の野望についてお聞かせください。
この作品を1人でも多くの人に観てほしいと思っています。いつもどこかの地方の映画館でやっている息の長い作品になってほしい。そして、この映画をきっかけに、ディケイドの俳優にビッグな仕事が決まって大ブレイクすることですね。「あの作品の三浦くんがよかったよね」と三浦くんがすごくいい映画の主役に決まったり、山本浩司くんにアメリカから本当に映画のオファーが来たり。そうなればいいなという思いを込めて、作品を撮りました。僕自身の野望はあまりないのです。この作品をきっかけに、映画に関わってくれた誰かがうまくいってくれると最高です。

村本大志(むらもとたいし)監督プロフィール

村本大志監督
日本大学芸術学部映画学科卒。東北新社SPS部入社後、横浜博や名古屋デザイン博といったイベント 大型展示映像の制作に携わるようになる。その後、同社CM本部異動後はCMディレクターとして企 画•演出を手掛ける。1996年に東北新社を退社し、フリーランスに。1997年に映画『ポッキー坂恋物 語』第一話を監督。2004年には田口トモロヲ主演映画『MASK DE 41』を監督。CFにとどまらず幅 広いジャンルで演出活動を続けている。東北新社在籍中に知り合った映画監督の相米慎二氏に師事。 晩年の相米監督と多くの時間を過ごした。

『AMY SAID エイミー・セッド』

『AMY SAID エイミー・セッド』

©2017「AMY SAID」製作委員会

<STORY>
あの日、エミは言った…。 全員が、心の片隅に鳴り響いていたエミの言葉をしまい込んでいた。
映画研究会の仲間9人。その中のファムファタル的な存在だったエミ(柿木アミナ)がある日突然彼 らの人生からいなくなって20年。彼女の命日に久しぶりに集まったのは、パン屋を営む朝田(三浦誠 己)、無農薬野菜をつくる飯田と直子(渋川清彦、中村優子)、売れない俳優岡本(山本浩司)、キャリア ウーマンの美帆(石橋けい)、介護士の五島(松浦祐也)、IT会社を経営する木塚(テイ龍進)。「わたし本 当は知ってるの、エミが死んだ理由。ずっとみんなに言いたかった」突然の直子 の言葉に、それぞれ の中で止まっていた時間が動き出す。そしてそこに訪れる、招かれざる客、川崎(大西信満)。彼が現 れた理由は、朝田にとって思いもよらないものだった。かつて同じ夢を見て、同じ夢に破れた。20年 後、僕たちはようやく本当に語るべきことを語り合える。生きること、死ぬこと、そしてまた生き続 けること。エミが最後に言いたかった言葉を探す、ある一夜の物語。

2017年9月30日(土)、テアトル新宿ほか全国公開
監督/脚本:村本大志、脚本:狗飼恭子
出演:三浦誠己、渋川清彦、中村優子、山本浩司、松浦祐也、テイ龍進、石橋けい、大西信満、村上虹郎、
大橋トリオ、渡辺真起子、村上淳
音楽:jan and naomi テーマ曲:「AMY SAID」(大橋トリオ)
配給: ディケイド
©2017「AMY SAID」製作委員会
公式サイト:http://amy-said.com/

<取材・文:堀木三紀>

2017-09-22 | Posted in NEWSComments Closed