「ここ数年のアジア映画で NO1」と絶賛!7月29日公開『ローサは密告された』石井光太氏トークイベント

現地を知る人気作家がスラム街の怖さを語る!
警察の腐敗も麻薬事情もまるでそのまま!

第69回カンヌ国際映画祭でをもたらした『ローサは密告された』が 7月29日(土)より、シ アター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開します。
公開に先立ち、試写上映会を実施。上映後には 作家の石井光太氏を迎えて、トークイベントが行われました。

『ローサは密告された』

©Sari-Sari Store 2016

貧困が加速度をあげて進行するフィリピン。ちょっとした生活向上のために手を出した麻薬密売が家族を危機に導く。徐々に加速する警察の横暴。ロドリゴ・ドゥテルテ大統領政権下、一般市民が貧困から麻薬密売に手を出し、警察から命を狙われるという麻薬撲滅戦争の恐怖の連鎖が垣間見える。現地フィリピンの様子を知る作家の石井さんが「まさにスラムのリアル。そして何より人の生きる力に圧倒された。何十年と変わらぬ貧困の姿。ここ数年のアジア映画で NO1。」と絶賛。知られざる“フィリピンの真実”を知る貴重なトークイベントとなりました。

―本作の感想をお聞かせください。
石井:映画だからこそできる人間の生き方を描いた素晴らしい映画だと思っています。スラムに住む彼らの、ひいては人間の生き方をリアルながらもドラマチックに描いた作品だと思います。この地域に住む人々は白黒はっきりする生き方をできません。生きるために麻薬を売ったり、売春したり、人を騙したり。彼らは生きるために悪いことをしていますが、人間の尊厳をギリギリ保っているのです。それは日本にも通じるところがあると思います。この『ローサは密告された』は、 そのグレーの世界を政府が白黒をはっきりさせようとしたときに、その世界のバランスは崩壊してしまう、というお話しです。

―石井さんは実際にスラム街を取材されたことがあるとうかがっています。
石井:『ローサは密告された』のスラム街はリアルそのもの。貧困と麻薬は結びづきが強いけれど、海外には日本にない‘麻薬の恐ろしさ’が存在します。それは、麻薬の資金は、反政府組織だとか、テロリストに繋がっていくのです。だから、貧乏なジャンキーが一人増えた、というだけの話ではありません。そのため政府は貧困層の中毒者にも容赦無く、制裁を加えようとするわけです。

―実際のスラムで怖い経験はありましたか。
石井:この状態は気をつけろ、と自分で決めているものがあります。ひとつは、相手が正気な状態かどうか。中毒者であれば突然、「バン!」と撃たれて「ドス」と刺される可能性がありますからね。もうひとつには、取材する人の周りに人がいるかどうか。知り合いがいると、かっこつけて危ないことをしようとする人がいます。だから集団でいる人たちへの取材は極力避けます。でも気をつけても、トビラ開けたらぶっ壊れている人間が 10 人ぐらいいる部屋に入ってしまったときには「オーマイガー!」ってなりましたね(笑)

―なぜフィリピンの警察は汚職が進んでしまうのでしょうか。
石井:そもそも警察の給料がかなり低いんですよね。だから警察の仕事をしていても生きていけません。だから、あのような密告事件が多発し、捕まった人たちへの高額な見逃し料の要求に繋がります。また、取り締まる人と捕まる人との教育レベルの差が日本人の我々が想像する以上にあります。売人には幼稚園さえ出ていないという人間もいるのです。そうすると常識というものがズレこむんですよね。さらに多国籍な国だと言語が通じないこともある。そうすると、なにか騒ぎがおきると銃が出てきちゃうわけです。事件は減ることを知りません。

―物語に登場する食べ物の味はいかがでしょうか。
石井:マズいに決まってるでしょう!(笑)血の塊を固めたもの、ご覧になっていた皆さまも、食べたいとは思わないでしょう?

 

石井さんはフィリピンの警察が直面している容疑者との関係、そして汚職が生まれていく原理を解説。ダークな内容もありましたが、石井さんがときどき挟み込むジョークに会場は大きな笑い声が響きました。そして大きな拍手の中、トークイベントは終了。
試写会後の反応では「普通の店で麻薬を売っているのも驚きなら、それを取り締まる警察の荒廃振りも驚き」「フィリピンで今、起きている「現実」を前に、我々には成す術のない無力感が、観た後も重く腹に響く」「食料品屋が覚醒剤を何の不思議もなく置いてるのに衝撃!」とフィリピンの現実を突きつけられた衝撃の声が並びました。

【イベント概要】
日時:7月3日(月) 上映開始 19:00 トークイベント20:50~21:10
場所:映画美学校試写室(渋谷区円山町1-5KINOHAUS地下1階)
登壇者:石井光太さん(作家)
経歴:『物乞う仏陀』(文藝春秋)でデビューして以来、国内外を舞台にしたノンフィクションを中心に、児童書、小説など幅広く執筆活動を行っている。2012年「情熱大陸」に出演。2013年には『遺体―震災、津波の果てに―』(新潮社)を原作に、君塚良一監督、西田敏行さん主演の映画『遺体 明日への十日間』が公開された、常に注目を集める作家である。近著に、7年ぶりの本格海外ルポとなった「世界の産声に耳を澄ます」(朝日新聞出版)がある。
《石井光太さんコメント》
社会の底辺の人は、時として罪を背負わなければ生きていけない。法がそれを罰するものであれば、
芸術はそんな人間を愛しむものであるべきだ。本映画は、芸術の役割を残酷に、かつ見事なまでに果たしている名作だ。

『ローサは密告された』

『ローサは密告された』

©Sari-Sari Store 2016

ローサはマニラのスラム街の片隅でサリサリストアを夫ネストールと共に経営している。かつての日本の下町のように、密接して暮らす人々のつながりは深い。ネストールはいつもだらだらしてばかりだが気は悪くない。店を切り盛りするのはローサ。ローサには4人の子供がおり、彼らは家計のため、本業に加えて少量の麻薬を扱っていた。ある日、密告からローサ夫婦は逮捕される。さらなる売人の密告、高額な保釈金……警察の要求はまるで恐喝まがいだ。この国で法は誰のことも守ってくれない。ローサたち家族は、したたかに自分たちのやり方で腐敗した警察に立ち向かう。

7月 29 日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!
監督:ブリランテ・メンドーサ
出演:ジャクリン・ホセ、フリオ・ディアス
配給:ビターズ・エンド
©Sari-Sari Store 2016
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/rosa/

2017-07-05 | Posted in NEWSComments Closed 
error: Content is protected !!